死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

『神無迷路』をクリアした

『神無迷路』をクリアした。とても面白かった。以下、一定のネタバレを含む感想。

 

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 グラフィックをひと目見て分かるとおり、かまいたちの夜フォロワー作品である。と言っても、それは外観的、UI的な部分の話で、ストーリー、あるいは作品のテーマ的には異なる。本作でも人は死ぬし、犯人探し、トリックの検討など推理要素を一応は含むが、それがメインではない。かまいたちの夜っぽい雰囲気に惹かれてプレイすると、期待とは少し異なる感想を抱くだろう。どちらかと言うと、さらに他作品の名前を出してしまうが、Ever17寄りではないだろうか。そして本当にシンプルな表現をすれば、打越鋼太郎作品が好きな人は、本作をきっと楽しめる。だから、本作が、根源的にはあまりミステリミステリはしていない作品だということを、プレイする前に認識しておくほうがよいと思った。相応に肩の力は抜いた方がよい。

 そのような作品であることは、作品説明にもティザーの映像にも現れているので、全くもって騙し討ちではないのだが、それほどにかまいたちっぽい青いグラフィックの印象が強いということであろう。

 

 舞台は狭く、物語の展開は早い。一連の事件は地下の研究所で発生し、物理的な階層としては二つである。登場人物も限られるため、必然的に推理の幅は狭くなる。もとい、最初からどう考えても怪しい登場人物がいるので、当該人物が主として事件に関与しているか、裏をかいて全く関わりを持っていないか、おおむねどちらかであろうと想像できる。

 残る問題は動機であるが、ここが本作のポイントであろう。非常にスケールが大きく、ジャンルに耐性がなければ置いてけぼりを食らうかもしれない。しかし、決してそこに至るまでの過程は雑ではない。少なくとも、何か通常の世界では起き得ないことが起きている、とは分かる。それにより、プレイヤーは思考の切り替えができる。

 その上で、犯人当てで少し苦労したのだが、理由は結局誰を犯人として示すのが適切なのかの判断ができなかったからである。蓋を開ければ、登場人物のほとんどが共犯と言える。悩んだ末、ストレートに選んだら運良くあたりを引けた。考え過ぎはよくないということか。

 また、登場人物は決して少なくないのだが、実質的に主人公を含む3人で物語が回っており、その他の人物が掘り下げがなく、もったいない感じはした。実際のところ、複数のキャラにおいて、いてもいなくてもよいとの感覚を抱いてしまう。ただ、ストーリーをこれ以上に長くする必要性までは感じられず、これで丁度よい、ということであろう。

 

 最後に、結果的になのかもしれないが、登場人物をこのグラフィックで示したことが、作品全体のバランスをよくしていると感じた。仮に、本作がいわゆるアニメチックな立ち絵で展開されたとすれば、テーマや登場人物の語り口と合わさって、ちょっとプレイするのはしんどかった可能性がある。かといって実写でやられてもむしろ安っぽくなってしまうだろう。キャラクターの魅力を認識できる程度には外観的に造形がなされ、それ以上の部分はプレイヤーの想像力で補える。図らずも、かまいたちの夜の表現形式が持つ強さみたいなものを、本作を通じて認識した。