死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

舞台が持つ謎を解く姿を見せる難しさ(『超探偵事件簿 レインコード』感想)

 X週遅れでダンガンロンパV3をクリアした際、しばらく新作は出ないのだろうと寂しく思っていたところに、『超探偵事件簿 レインコード』の存在が明らかとなり大層喜んだものである。ミステリアドベンチャーは増えれば増えるほどよい(なお、本作は「アークファンタジー推理アクション」である)。時間は足りない。ストーリーをクリアしたので以下ネタバレを含む羅列感想。

 

 

 ダンガンロンパとAIシリーズが混ぜ合わさったような作品で、結論としては楽しくプレイできた。密室空間たる列車を舞台にした事件に始まり、街が抱える大きな謎を解いていく。

 本作のストーリーが提示する大きな謎は2つ。一つは主人公であるユーマ・ココヘッドは何者か。もう一つは舞台となるカナイ区が抱える秘密とは、である。他にも、ユーマが死に神ちゃんと交わした契約内容とか、死に神ちゃんの由来とか、死に神ちゃんの行く末とか色々あるにはあるけれども、個人的には付随的なものに思えた。

 ユーマの正体は比較的序盤で察することができるだろう。少なくとも二択には絞られる。ただ、そのように早期に察せられるからといって、本作の面白さが損なわれるわけではない。それは純粋に謎を解いていく過程が面白いからである。

 ゲーム的により重要なのは2つ目の謎の方である。どうしてカナイ区という舞台を作ったのかに繋がるし、単純にはより規模の大きい謎だからだ。こちらも、プレイ終盤にはおおよそ全容が掴めるようになっているが、惜しむらくは、謎が明らかになった時の衝撃具合が思ったより小さい点にある。

 カナイ区の謎は、カナイ区およびそこで暮らす人々への愛着があればこそだと思われる。例えば、作品初期から主人公と行動を共にしていたキャラクタが黒幕だった。伝統的ながら、これは読み手に少なからずの衝撃を与えるだろう。信頼や親しみを裏切る形になるからである。しかしながら、本作においてカナイ区(の人々)にそのような感情を持つ、持てる場面は乏しいように思われた。もちろん、ヤコウ所長やクルミちゃんといったキーキャラクタは幾人か登場するし、あるいはサブクエストがその役割を果たす想定だったのかもしれない。しかし、それらを加味してもカナイ区の真実を知った際に、ユーマが受けたほどの衝撃を感じることはできなかった。

 念のため付言すると、謎のスケールが小さいとか、謎そのものが面白くなかったなどと言いたいわけではない。この謎を提示するのであれば、前提として、プレイヤーに(それこそマコトぐらいに)カナイ区を好きになってもらう仕掛けがあった方がよかったのではないか、というぐらいの話である。

 この点は各章の構成についても同じかもしれない。犯人への愛着がほとんどない状態で謎が解かれるので、「この人が犯人です」と言われても、ああそうかとなってしまう。ダンガンロンパとAIの印象を引きずっているだけとも思うのだが、4章はともかく、基本的には、舞台装置として提示されたキャラクタの中から機械的に犯人を指摘する作業になってしまっているように感じられた。

 

 また、ダンガンロンパの時からそうなのだが、プレイしていくうちに、ゲーム的な要素が段々と億劫になってしまう。端的には、普通に謎を解かせてほしくなってくるのだが、それであればわざわざゲームにする必要がない気もするので難しい(そもそも、「普通に謎を解く」とはどういうことか)。

 そのほか、細かい話ながら超推理フィナーレ後のまとめがスキップできない仕様は如何ともしがたかった。アップデートによって解消されたところを見ると、同じような要望が多かったか。ただ、制作側として、章の締めはちゃんと見てほしいとの思惑があったとすれば、それは理解できる。

 

 続編を作れる終わり方にはなっていると思うので、いつかその日が来るのを楽しみにする。願わくば、もう一度死に神ちゃんに会いたいとは誰しもが思うことだろう。