死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

フレッシュひまわりの残響

 クリスマスが近づくと、思い出すのはフレッシュひまわりの音楽である。

 

 そう、フレッシュひまわりというバンドがいた。あれは◯年前……と思い出すのも難しいので、困ったときはインターネットに頼ろう。

 

dic.nicovideo.jp

 

 ただの跡地である。彼らの動画は何一つ残っていない。

 

 ニコニコと言えば……の次に入る言葉は人それぞれだろうが、演奏してみたは盛況だったカテゴリの一つで、個人的にはゲーム実況と二者択一的に見ていた覚えがある。

 すでに活動を終えている、しかも個人(かどうかは分からないが)のバンドの過去を追いかけるのはあまり趣味が良い行いでもないが、年末だから想い出をたぐり寄せるのも許してくれるだろう。もはや自分の記憶力には期待ができない。

 ということで再びインターネットに聞いてみると、フレッシュひまわり(「フレひま」と呼ばれていたので、ここでもそう略することにする)の初投稿動画は、『WORKING!!』のSOMEONE ELSE。そういう時代である。

 そして、おそらく当時それを見たのだ。まず印象に残ったのは、やはりメインボーカルだった歌のお姉さんのハイトーンボイスである。男性のはずだが、どんな曲でも当たり前のように原キーで歌っていた気がするから、普通ならそれだけでも喉が千切れそうなものだが、千切れずに歌っている。高音厨音域テスト(これも懐かしい香りがする)では千切れていた気もする。ハートキャッチプリキュアのOPを非常に伸びやかに歌っていたのをよく覚えている。アニソンっぽくない歌い方(とは)と楽曲との乖離をネタ的に扱われていた気もするが、私はこの歌声が好きだった。

 お姉さんの声が目立つのは事実だが、しかしワンマンバンドなのかと言うとそうでもない。プリキュアのお面(だったはず)を被っているキーボードのマリリン、やるオプーナを被ったドラムのFK、何かしら被っていたベースの44。オプーナて。個性豊かである。

 メンバー全員が歌える人でもあった。この点を印象づけたのは『天使にふれたよ!』だった。やはりそのような時代である。お姉さんがクリスタルキングのような高音を響かせ、曲の持つじんわりとした感動を早々に吹き飛ばしたかと思いきや、意外とそんなことはなく、メンバーが順に歌を回していくにつれて「そういう卒業式なのかもしれない」との謎の感情が湧き上がってきた記憶がある。

 そんなフレひまが何年かにわたり、クリスマスになるとアップしていたのが、『クリスマス中止のお知らせ』である。このワード自体がもはや現世には塵芥ほども残っておらず、おそらく行き遅れ女教師キャラと同程度には消失した概念だろう。今となっては香ばしさも漂うかもしれないが、考えてみるとソシャゲのクリスマスイベントを楽しむのと行為的には同じようなものの気もするから、イベントの楽しみ方が変わったと言えるのかもしれない。当時から本気でリア充を憎んでいた人がいたとも思えない(が、いないはずとも言えない)。

 それはそれとして、彼らはデスボイスも駆使しつつ、元気にクリスマスの中止を宣言していた。高らかに歌っていた。そんなことをやりながら、彼らは彼らでサンタクロースの役割を果たしていたようにも、今となっては思われるのだった。