死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

「ンゴ」の表象

 図らずも時間の流れを実感してしまうことがあるが、これもそのワンシーンだろうか。いつものようにVTuberの配信を見ていた時のことである。

 

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 上記配信はいわゆる大喜利企画であり、その中で「大神ミオがよく使う語尾は?」とのお題が出された。なお大神ミオとは画面右上の黒髪のVTuberを指す。

 このお題に対して、猫又おかゆは「ンゴ」との回答を出した。なお、猫又おかゆとは、画面右下の紫の髪をしたVTuberを指す。

 この回答を見て私は「懐かしいンゴねえ」との感想を抱いたわけである。ンゴといえば元プロ野球選手のドミンゴ・グスマンを指したネットスラングであろう。猫又おかゆも古のネット民であるがゆえ、そこから引っ張ってきたに違いない。しかし、チャット欄を見て驚いた。誰もが私と同じンゴを想像している、わけではなかったからである。もちろん私と同じ感覚のチャットも見られるが、それと同様の規模、あるいはそれ以上の割合で別の存在を想起していたのである。

 時代を経て、ンゴという語尾がネットサーフィンを嗜む者以外にも使用されるようになったというのは知られた話である。しかし、現代においてンゴは、語尾という言語上の機能として認識されるのではなく、その使用者または特定の人物自体を想起させる語句となっているのである。

 すなわち、『アイドルマスターシンデレラガールズ』のキャラクターであり、「んご」という語尾を用いる辻野あかり。そして、「ンゴちゃん」という相性を持つVTuberの周央サンゴである。

 特に周央サンゴは、上記配信の主体である大神ミオらと同じVTuberであることから、おかゆの回答を見た視聴者が、「同じVTuber業界にいる周央サンゴを文字って回答したんだな」と認識しても何ら不自然ではない。

 ただ、ここで忘れてはならないのは、大喜利のお題はあくまでも「語尾」に関するものということである。たしかに周央サンゴはンゴを自称に用いるだけでなく、語尾としても使用する。しかし、チャット欄を見ると、もはやンゴ=周央サンゴであり、語尾としてのンゴから周央サンゴを想起したというよりかは、ンゴという語句から直ちに周央サンゴを想起したように思われるのである。

 すなわち、ンゴはネットスラングとして生まれてから一定の変遷をたどった結果、特定の人物を指し示す文言となった。そして私は歳をとった。こういった何気ない事象から加齢を実感させられるのであった。

 同様の事象は「っピ」との語尾にも見られる。穴久保幸作ポケットモンスターのピッピの語尾として認識されていたそれは、今となってはタコピーの語尾だと認識する人が多いだろう。世代は変わり、言葉は変遷し、人は老いてゆくのである。