幼少期の思い出って言ったらベイブレードだよなあ!? と言えるほどに入れ込んでいたわけではないが、コロコロコミック読者であった私は、爆転シュートベイブレードを読み、アニメを見て、ミニ四駆よろしく四方八方を飛び回るベイの姿を見ていた。2001年のことである。青木たかお先生が、木ノ宮タカオが主人公の漫画を書いている、と当時は不思議に思っていた。
爆転シュートベイブレードの略称は「爆ベイ」であるらしいのだが、そう呼ばれていた記憶も、呼んでいた記憶もなく、なんだかしっくりこない。しかし、わざわざ爆転シュートベイブレードとフルネームで呼ぶのもアレなので、長いものには巻かれておこう。
アニメ版の主題歌といえば、印象的だったのは無印版のOPである。おそらく他の視聴者もそうだったのではないか。というのも、この曲は爆ベイのために作られた様子だったからだ。その名も『Fighting Spirits -Song for Beyblade-』。タイトルからしてまさに、である。というか、こんなタイトルだったんだ。今日知りました。歌詞中に「四聖獣は愛のアスリート」とあるのだが、どういう意味なのか今見てもよくわからない。
そんなアニメ版爆ベイは、『爆転シュート ベイブレード 2002』とタイトルを変えて第2シリーズを始める。そして問題となるのは、その第2期EDである(ややこしい)。 あの時は歌手の名前も曲名も認識していなかったが、現代ではインターネットのおかげですぐに分かる。その曲は、Retro G-Styleの『What's the answer?』という。
先ほど挙げたOPのほか、アニメ版の楽曲でしっかりと覚えているのはこの曲だけだった。響きが優しかったんですよね。EDの映像もよくて、今も探せばそこらのインターネットに転がっていると思うが、3DCGのドラグーンが曲の終わりに合わせて回転を止める。動いているものが止まったあとの余韻。終わったにもかかわらず残る緊張。曲の優しさと、映像が醸し出す若干の寂しさが味わい深かった。
さて、爆ベイ2002の放送が終了してそれほど経たない時分。まだテレビっ子だった私は、夜更かししてとあるドラマを見ていた。『あなたの人生お運びします!』。アート引越センターをモデルにした作品である。放送の終盤、画面下にスタッフロールが流れるとともに、EDテーマが被さってきた。それは聞き覚えのある曲だった。そう、Retro G-Styleの『What's the answer?』だ。
同じ曲である。
幼少期「タイアップ」という言葉は知らないながら、それが一つのPR施策であることはなんとなく気がついていた。しかし、同じ曲が複数の作品の主題歌になる事例を当時の私は知らず、もとい今でも珍しいのかもしれないが、ともあれ私は「そんなはずはない!」と思ったのだった。なぜなら、この曲はベイブレードの曲だからである。ベイブレードの曲であるはずだったからである。
しかし、現実は違わなかった。What's the answer?は複数の作品においてタイアップを勝ちとった曲であったのだ。
Wikipediaでもわざわざ言及がされている。「TBS系ドラマ『あなたの人生お運びします!』(2003年放送)では主題歌として使用された。」。そして、上記のYoutubeの動画概要欄にもこう書いてある。「2003年TBS系列ドラマ『あなたの人生お運びします』主題歌」。
それはきっとめでたい話だったのだろう。子供向けのアニメーションと全国ネットのドラマ主題歌。大変素晴らしい実績だ。しかし、私は複雑な思いをしていた。この曲はベイブレードの曲であるはずなのに、あったはずなのに、ドラマに"取られてしまった"……。
……取られた?
これが取られるという感覚なのか。別にこの曲は私のものではないのだが。
ともすると、この経験は私がNTRを苦手とするようになった原体験ではなのではないか。この胸がざわめくような、大切なものが指の間からすり抜けていくような、つらい感覚が……
???「素質あるよ」
うるさいですよ。黙っていなさい。