ゲーム作品については、プレスリリースを知ってそのまま購入に至るようなことは基本的にないのだが、Tides of Tomorrowに関しては、Xでニュースが流れてたのを見てそのままSteamのストアページへと足を運んでいた。
それはひとえに、本作のDeveloperであるところのDigixArtが開発したROAD 96が非常に面白かったからである。ROAD 96と同様、熟達したストーリーテリングはそのままに、よりプレイヤーに実際的で取り返しのつかない選択を常に迫りながら、さらに「他プレイヤーからの影響」という要素を組み合わせている。その結果としてゲーム体験に厚みが出ているともいえるし、一方で(そのほかの要素とさらに合わさって)落ち着いてプレイできない一因にもなっていると感じた。
主人公=プレイヤーは、タイドウォーカーと呼ばれる属性を持っており、そしてタイドウォーカーは他のタイドウォーカー(プレイヤー)の選択や行動を視覚的・聴覚的に認識することができる。このような設定のもと、ゲーム上の具体的な動きとしては、特定の他プレイヤーを一人選択(フォロー)し、自分は、そのプレイヤーが行った過去の選択の影響を受けながら物語を進めていくことになる。これが本作の特徴的なシステムであり、楽しさと面倒くささ(歯がゆさ)のバランスが率直には非常にピーキーであるようには感じた。
というのもこのシステム、自分の思っているように物語を進めることが難しい。例えばAというプレイヤーをフォローしたとする。本作の構造上、私は常にAの一歩後ろを歩むこととなる。つまり、行く先々にはすでにAの選択の痕跡があり、その結果を引き受けながら進まなければならない。例えば、Aが重要なNPCと関係を悪くしていたとする。すると、そのNPCは「タイドウォーカー」に対してネガティブな感情を抱く。その結果として、私もまた、まだ何もやっていないのに、そのNPCとの間ではマイナスの信頼関係から事を始めなければならないのである。
もちろん、反対に得をすることもある。Aが円滑に周りと信頼関係を築いてくれたような場合。後にくる私のためにアイテムを置いてくれた、壊れた橋を修理してくれたような場合。それらの助けによって、ゲーム上の金銭・資源的なリソースを節約することができる。
ただ、そのように助けられた経験というのは正直に言って少ない。これはAが悪いわけではない。そもそもこのゲーム、そんなに簡単でもなく、またそういったリソース類に潤沢な余裕があるわけでもないのである。まずもって自分自身のプレイ体験を大事にしようとすると、必然的に別プレイヤーに協力・連帯しようという気持ちは薄くなる。自分の行動が結果的に後進にとって良い影響を与える、という話であればあまり意識せずともよいのだろうが、本作は結構意識的に他者を助ける必要があるように思われた。しかし、実際にそうすると自分のプレイがおぼつかなくなるのは明らかなので、結果的に後の人を顧みることがなかなか難しい(一方で、積極的に協力をしていかなければ、世界の謎解明的な部分にはたどり着けないような雰囲気である)。
フォロー先は途中で変更することができ、またこれまでどのような道を歩んできているのかも一定程度は事前にわかるようになっているのだが、まさに今これから進もうとしている場所でその人が何をやったのかというのは、選んでみるまで分からない。いざ選んでみると「Aは○○を説得できなかった(ので私が行くときにはすでに信頼関係が崩れているところからスタート)」みたいなダイアログが出て、「またか」とため息をつくことも多かった。というか後半に進むにつれてほとんどそんな感じであり、フラットな状態で進めさせてほしいのですが! とちょっとしんどくはあった。もっとよい選び方や、あるいは模範的で有名なプレイヤーリストなどがあって、初心者はそれらの皆さんから選びましょうみたいな教えがあるのかもしれない。
そういった外部要因もあるなか、プレイすればするほどに、自分が最善の選択・行動をとれていないことを身に染みて感じることになる。これもそこそこしんどい。ただ、それでもプレイ自体を止めるに至らないのは、結末を見届けたいと思わせるストーリーによるものだと思う。ここはデトロイトとか、それこそROAD 96とも同じくする点だが、自分がそれなりの選択を踏んでいった手前、ちゃんと最後まで見届けないとといった気持ちになるのである。
ということで、私は無事に世界をおおむね壊滅させてしまったが、それもまた致し方なしとしてすがすがしい気持ちではあった。次はもっとうまくやるから…と言いたいところだが、本作、リプレイするには少しプレイ負荷が重めではあると思う。一周を終えた時点で、ハッピーエンドへの道筋は見えるのだが(一周目でたどり着ける人もいるだろう)、そこにたどり着くまでの過程を考えるとなかなか手間だと感じてしまう。これは会話やイベントがスキップできないとか、各ステージレベルでは同じ作業を繰り返すことになるとか、デザイン(システム?)面の負担感である。そしてここに、フォロー先のタイドウォーカーによるランダム性が加わることで、楽しみよりもしんどさが上回ってしまうように思われた。このあたりの負担感が低減される場合には、再び世界を救いに行きたいと思う。
本作は、他人の選択の結果を引き受けながら、自分の選択を見出していく必要がある。場合によっては本来採れる選択肢がもがれている中で、それでも最善を探そうとすることの大切さと大変さを楽しめれば、なかなかないゲーム体験ができるように思われた。などとえらそうなことを言っているが、私をフォローしてくれるプレイヤーもまた、私という前任者からぐずぐずの案件を引き継ぐことになるので、非常に申し訳なさを覚えている。