ハーヴェステラをクリアした。以下は物語の核心部分等のネタバレを含む感想である。
終わってみればとても良いゲームだと感じているが、そう感じられるまでには時間を要した作品だった。それは主にシステムのせいだと思われる。全体的に何となく不便なのである。
本作は(私は未プレイだが)ルーンファクトリー系統のシステムで、大まかに言えば牧場物語的な農場運営要素にハクスラのRPG要素をくっつけているのだが、これらがあまりうまくくっついていないように感じられた。
その本質はしっかりとJRPGであり、ファンタジーの顔をしたSFであり、たぶんクロノトリガーである。というのは単にクロノトリガーっぽい裁判パートがあるからだけではなくて、魔法とか時間遡行とか(さらにいえば空間転移もあって)、そういう複数の要素が入り混じりつつ、星や人間の意思が絡んで、さらには各キャラクターとの交流もあって……と、なかなか懐かしい気持ちになるのである。そして懐かしいだけではなくて、現代にチューニングされているからより面白いゲーム体験になっている…ところもあればなっていないところもあり、そういうのが「とにかくよい作品だった!」とまでは言えないところだと感じられる。
プレイすればするほどに、戦闘面では「コマンド戦闘でいいのでは?」と感じ、また農業面では(あとからこの感情はなくなっていったものの)「あまりここに時間をかけたくないのだがなあ」との気持ちになってきてしまう。念のため付言すれば、農業面が面白くないわけではないのだが、農業面のシステムを設けるために、ゲームの他の部分に不必要な制約をかけることになっているのでは、と感じたのである。
具体的にいえば、お金とスタミナ(空腹度)の概念である。これらは基本的に農業を介してしか得ることが(回復することが)できない。農業で得られた作物を売却しお金を得る。同じく、その作物を用いて料理を作る。何だったらジュースも作る*1。お金がなければ装備を強化できず、また作物の種も買わなければならないのでそれほどバンバンと使うこともできず、次の金策を考えながらやりくりしないといけない。
そしてお金と同様にスタミナも大切である。本作では何をするにもスタミナを使う。畑を耕すにも必要だし、敵を攻撃するにも必要だ。鍬や武器を一振りするたびにスタミナゲージが減少していく。ダッシュをするとみるみるうちに減っていく。これは料理や食材を食べることで回復するほか、食事によって空腹度が0%を超えている間はリジェネ的にも回復していく。
つまり、作物を育て、収穫し、売却(さらには加工商品するかも含め検討)または料理とする分に峻別し、農業サイクルを回していく必要が出てくるのである。それぞれの解決策が特段難しいわけでもないのだが、常にそういった何かしらの制約を抱えながら農業サイクルを回すことになり、シンプルにあまり心地よい体験ではなかった。
ゲームも中盤に差し掛かると、農業サイクルの回転に比較的余裕が出てくるし、また経験則として、ともかく一旦農業に全集中すると当初のストレスの大部分が解消されることもわかってくるのだが(そしてそれに私が気づくのが遅かっただけではあるのだが)、困ったことにそれを邪魔してくるのがストーリーの面白さなのである。早く読み進めたいという気持ちにストップをかけながら、土を耕し種をまいていると、無理矢理にそこに押し留められている感覚となり、一定のストレスがあった。
ストーリーについてはすでに述べたとおり、ファンタジーかと思っていたら全然そんなことはなく、気づくとSFになっていて、答え合わせで二度三度のひっくり返しをしてくるタイプの非常にエンタメ作品である。サブクエスト(キャラクエスト)も含めて段々と世界の輪郭が明らかになり、単なるタイムトラベルでもなく、現実の我々が生活するこの世界の延長線上、すなわちもはや地球に人間が住めなくなった後の物語であることが分かる。
上記の農業関係のほか、会話がスキップできないとか、会話ログがないとか、細やかな不満があるのに加え、感情が豊かではない3Dのキャラクタの寸劇を見なければならず、さらに身振り手振りが一定の共通モーションであるため*2、これであればむしろイラスト立ち絵で表現したほうが良かったのではないかと思わなくもない。といった細々とした引っ掛かりはやっぱりあるのだが、そういうもろもろを全部吹き飛ばして満足感に帰着した理由は、主人公のキャラクター性に設けられた二重の仕掛けと、それが明らかになるまでの演出である。
本作には主人公が行う会話において、選択肢のシステムがある。しかし、あってないようなものである。どちらの選択肢をとってもストーリーには関係がなく、もとい、そもそもどちらの選択肢も同じようなものであることも多く、もはや選択肢として設ける必要性がないと感じられる場合も少なくなかった。
しかし、メインストーリーの最後の最後で、主人公は大きな決断を迫られることになる。コールドスリープで眠っている旧地球人類の命か、それとも月面で発展した新人類の命か、どちらか一つを選ばなければない。ここで(おそらく)初めて選択を行う意味が生じる。さらに、表面上現れないが、主人公は第3の選択肢をとることもできる。両方の命を救うという選択だ。これこそがトゥルーエンドへの道であり、自らの意思によってゲームのクリアを勝ち取ることができるのである。
そして、大きな選択から一段落したのち、星の意思が形をなした存在から、主人公はその出自を明らかにされる*3。主人公は、コールドスリープで眠っている旧地球人類の意思が、新人類に埋め込まれた存在であるのだ。ここにおいて、主人公の中には、主人公自身、そして旧地球人類側の意思がお互いに邪魔をしない形で併存していることになる。そして、これまでのあらゆる選択肢においては、主人公だけで意思決定を行っていたわけではなく、旧地球人類としての意思も影響していたのだった。
ところで、本作の最終話*4のタイトルは「あなたの世界の物語」である。本作では、著名なSF作品名が散りばめられていることからすると、これも「あなたの人生の物語」を模しているのだろう。ただ、それは重要ではない。大切なのは、ここでいう「あなた」とは誰を指すのかということだ。
作中では、「あなた」とは主人公であり、そして眠っている旧地球人類としての主人公でもある。物語上一貫して、時を越えて常に「あなた」の物語だったということだ。しかし、よくよく考えてみれば、主人公の意思決定を行っていたのは、結局プレイヤー自身である。それであれば、旧地球人類としての主人公は、プレイヤー自身の写し鏡といえる。
すなわち、本作はプレイヤーである私たちに語りかけている。本作は人間自身の営為によって地球がもはや住めなくなり、外界に活路を見出した、その一つの結果を描いた作品だ。しかし、この結果に至るまでに、人間は他の選択肢をとることができたのではないか。あなたの世界は、どんな選択で作られているのか。地球を住めなくしたのも、そこに至る前で別の選択を取り得たのも、すべて「あなた」つまり、我々自身の話である。ゆえに、「あなたの世界の物語」なのである。
本作は我々の今の世界の延長線上にある、今後あるかもしれない世界の話なのだ。そうならないために何ができるか、それも「あなた」の選択に左右されるものだと、それであれば「あなた」はどうするのかと、本作はプレイヤーに問いかけているのである*5。
*1:ジュースは本作におけるメイン体力回復アイテムであり戦闘中ひたすら飲み続けることになる
*2:説得や怒っているときはすごい勢いで手を振り回すし、何か思いついたときは指パッチンを鳴らすのだが、サブクエに登場するキャラも含めてみんなそんな同じモーションなのでちょっと安っぽく見えてしまう
*3:しかもこの真実が明かされるかどうかも主人公自身の選択に委ねられる
*4:本作はストーリーの展開に応じて「第◯話」とのチャプター分けがなされている
*5:あえていえば、このように最終的には選択というものに一定以上の価値を見出す物語であるにもかかわらず、農業や食事を強いられるかのように感じてしまうところに齟齬を覚え、不満となったのかもしれない。また、農業要素がなくとも本作は十分に成立すると思うが、企画として通らないとかそういう問題はあったのかもしれない。