死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

好きな『好きな◯◯発表ドラゴン』の好きなところ

 毎度のごとくインターネットの流れから6周遅れぐらいのスピード感でようやく『好きな◯◯発表ドラゴン』の魅力に触れた私は、その裾野の広さ、すなわちあらゆるジャンルを知る入口のさらに入口的役割を果たしている数多のドラゴンに感動を覚えながら、世の中にはこういう「好き」もあるんだねと感心しきりの毎日である。知らないものの多さを知るのはまったくもって楽しいことだ。

 大本のコンテンツから様々な派生作品が生まれネットに流れていく様子は、古式ゆかしいニコニコ動画を思い出し、ああインターネットだなあなどと感じる。ただ、このドラゴンはそういう懐古にとどまるのではなくて、ドラゴンを聞いた者に対して、自分も「好き」をドラゴンを介して発信してみよう、と気軽に思わせてくれる点が素晴らしいのではないかと思った。ほのぼの神社アレンジの系譜と言われればそうかもしれないが、多種多様なドラゴンの原曲である『好きな惣菜発表ドラゴン』を作ったンバヂさんが、二次創作しやすいように積極的にドラゴンをフォーマット化されている点が世界をより広げている。あなたもわたしもドラゴンになれる。

 

 様々なドラゴンの中でも、音楽系ドラゴンはやはりキャッチーで楽しい。例えば、以下のような作品がある。

 

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 どれもアレンジ自体に妙を凝らしている、楽しい動画である。ただ、私がいいな~と思ったのはアレンジそのものではなく、「落ちサビ」の取り扱いにある。落ちサビとは、Wikipediaからさらに孫引くところによると、

音楽を聴いていて、サビはサビでも、周りの音が静かになって、ヴォーカルのメロディだけがものすごく目立っているサビってありますよね。ラストに向けてグワ~っと盛り上がっていくために、ちょっと抑えめにするというか。ああいった、他の楽器の音を極端に落として、メロディを目立たせるサビのことを「落ちサビ」といいます。

引用元:https://www.shinko-music.co.jp/b-pass/word/a.html

というもので、感情的な盛り上がりを表現するための楽曲構成技法の一つと言える。そして、上記の3作品(以下、単に「3作品」という)はどれも落ちサビを採用している。

 

 ここで、原曲である『好きな惣菜発表ドラゴン』を確認する。原曲の特徴の一つは、ラストに発表される「ごぼうとにんじん炒めたやつ」という曖昧な惣菜について「きんぴらごぼうかな」と特定を図りにいく点にある。

 

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 3作品は、原曲で言うきんぴらごぼうの位置に落ちサビを置いている。ここに落ちサビを置きたくなるのもよく分かる。単なるネタ被りと言えばそれまでだが、その上で着目すべきは、各作品が落ちサビをどのように呼称しているかである。

 すなわち、『好きなアレンジ発表ドラゴン』では「ラスサビで急に静かなやつ」、『好きなリズム発表ドラゴン』では「サビで壮大になってるやつ」、『好きな音楽発表ドラゴン』では「サビ前で急に静かなやつ」と、絶妙にちょっと違うのである。しかし、どれも落ちサビのことを指しているのはよく分かる。私がいいなと思ったのは、そのゆらぎであり、幅であり、余裕である。これらは、『好きな惣菜発表ドラゴン』が持つ懐の深さそのものであるように思ったのだった。