死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

CRカップ、ストリートファイター6、小路KOG、EVOという一連の出会いと私

 何にでもふとしたきっかけで出会うことがある。私にとってのそれは、プロ格闘ゲーマーの小路KOGさんだった。氏を知ってからの約1ヶ月が非常に楽しかった。そのような経験をした際には、書き残しておくのがよいとされる。以下はそのような趣旨で書かれる日記である。

 

 元を辿ると、発端は今年の6月下旬に行われたストリートファイター6のCRカップである。私は決して格ゲーに明るくない。プレイ遍歴で言えば闘神伝2・3と、あとは年末恒例的に友人とやるストⅢ3rdぐらいだ。強いて言うなら、その友人に譲られた『ウメハラ FIGHTING GAMERS!』が家に3巻まである。

 そんな私がどうしてCRカップを見ていたのかと言えば、ご多分に漏れずホロライブの影響だ。本大会には、ホロライブから戌神ころねさん、獅白ぼたんさんの両氏が出場していた。普段外部との共演が多いとは言えない中で*1、どのような化学反応が起こるのか。それを楽しみに思い、視聴していたのである。

 ゲームの大会は在りし日の部活動を思い起こさせることが多いが、CRカップもそうだった。私はころねさんが属するチーム、かzooの子を中心に視聴していた。大将を務めたかずのこさんを筆頭に、なないさんらコーチ陣を含め、個性の溢れるメンバーの掛け合いが非常に楽しかったのみならず、全員が同じ方向を向いて頑張るその姿に、大変いいものを見たなと思ったのだった。

 その影響からか、ストリートファイターへの興味も湧いてきた。普段なら行かないだろうに、手塚治虫記念館がカプコンの企画展をしていると聞いて足を運んでしまったぐらいである。

 塗和也のキービジュアルが燦然と輝き、手塚治虫調のマリーザはかわいかった。阪大のイメージが強い手塚治虫だが、奈良県立医科大学で博士号を取得しているとの知見も得られた。使い道があるかは分からない。

 

 さて、KOGさんもまた、このように私に影響を与えた大会を盛り上げる重要なピースの一つだったのだが、この時の私はまだ氏のことを知らない。しかし、Youtubeの視聴履歴を見返すと、どうやらニアミスどころか、しっかりその姿を捉えていたようである。6月25日、私は下記の動画を視聴していた。

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 冒頭に思いっきり「小路KOG」と表示されている。しかも顔写真付きだ。しかし人間とは不思議なもので、この時はどぐらさんの存在に意識が向いてしまい、失礼ながら同席しているKOGさんには意識が及んでいなかったようである。以降、私はどぐらさんの切り抜きをよく見るようになり、Youtubeトップには格ゲー関連の動画が表示されるようになっていった。そして7月9日、私は小路KOGさんと改めて出会うことになる。

 

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 ホロの切り抜き動画に人間どころか男性が現れるのは稀であろう。何だ何だと見に行くと、そこにはニコニコ顔で小気味良いトークを繰り広げる人の良さそうな関西弁の兄ちゃんがいた。小路KOGさんである。

 面白いと思ったのだった。それは、よく言われている「人がコンテンツの沼に落ちていく過程を見れる」からだけではなく、一つ一つの言葉選びや、チャットへの応答に対して得た感想だった。もちろん、切り抜き特有のテンポのよさも影響しているが、やはりそれだけはない。見ていてあっという間に8分半が終わっていた。以降、目の前に現れる氏の切り抜きには目を通すようになっていった。

 

 私の中で小路KOGさんへの関心が強くなった決定的な動画が二つある。一つ目がこれだ。

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 コメント欄と同じ感想を覚えた。「KOGさんって格ゲー強い人なんか!?」 それもそのはず、この時点に至ってもまだ、KOGさんがプロゲーマーだと認識していなかったからである。そしてここからCRカップに遡り、どぐらさんとの切り抜き動画に戻り、ようやく「あの時の人か!」と繋がったのであった。

 それからというもの、私はKOGさんの切り抜きをさらに漁るようになった。楽しそうにホロライブを語るKOGさんの姿は見ていて清々しい。しかし、そう時間を要せずして重要なことに気がつく。KOGさんはホロライブがなければ面白くないのか? 答えは否である。そもそもKOGさんが面白いのである。

 

 その実感を強く持った、二つ目の動画がこれである。

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 唐突な自分語りで恐縮だが、この時分、私は労働が特に忙しく(当人比)、遅くに帰宅しては寝る準備をしながらKOGさんの切り抜きを見て眠りにつく生活を送っていた。この日も風呂に入って歯を磨き、いつでも眠れる状態に持ち込んでから、特にVALORANTに関心があったわけではなかったものの、KOGさんの切り抜きということで再生ボタンを押すことにした。もはやホロと優先順位が逆転している。

 初っ端から、「(知識なしで見てもなかなか分かりにくいので)メンバーの掛け合いを楽しむのがよい」とのまことに現実的なアドバイスから始まり、率直すぎて笑顔になる。続き、分かりやすいゲームシステムの解説が始まり、各メンバーの役割や、実際の動きの理由に関する解像度が上がっていく。どういった趣旨のイベントが起こっているのか、そして各プレイヤーがどのような目的を持って行動しているのかが、おぼろげながら分かってくる。誰の活躍があったのか、どのような駆け引きがあったのか。つまるところ、この競技の全体像が、段々と把握しやすい形で浮き上がってきたのだった。

 KOGさんの解説自体が一つのコンテンツになっている。もちろん、ホロのVALORANT、という材料があってのことではあるし、切り抜きにおける編集の巧みさも忘れてはならない。しかし、今私が笑顔になっているのは、間違いなくKOGさんの解説を聞いたからなのである。

 時計は24時をとうの昔にまわっていた。疲れた頭にKOGさんの落ち着いた声調の関西弁がよく効く。聞いているうちに、私は幼少期を思い出していた。同じマンションに少し年が離れた兄ちゃんがいて、よく遊びに行っていた。彼の家にはスト2があったのだ。スーパーファミコンの時代である。何度やっても波動拳は出なかった。ブランカの電撃は出た(連打するだけだから)。

 

 

 切り抜きを見て「荷造り」との語句が気になった私は、引っ越しでもするのかと思って調べてみると、KOGさんはどうやら格闘ゲームの大会でラスベガスに行くらしい。いわゆるEVOである。EVO自体は知っていたが、真剣に触れたことはない。「レッツゴージャスティーン!」の大会ですよね! あ、違うんですね……すみません。それぐらいのレベルだ。何となくは知っているが、よくは知らない。

 エントリー人数が7000を超えるこの大会を勝ち抜き、壇上で自身の推しである角巻わためさんのグッズを掲げる。KOGさんはそんな目標を立てていた。なんとも面白そうではないか。ここに至っても、私はKOGさんの格ゲーマーとしての実力をしっかりと理解してはいなかった。しかし、実際の強さがどうであれ、多国籍かつ多人数の参加者からなる大会を勝ち進むのは、素人目に見ても難しそうである。果たしてその目標を達成できるのか。これは是非とも追いかけなければならない。

 

 EVOではすべての試合が配信その他で中継されるわけではなかった。カプコンのチャンネルや、なないさんの現地練り歩き配信をラジオ代わりに、時たま更新されるKOGさんのTwitter(旧称)を見つつ、その状況を追いかけていた。どうやら無事に勝ち残っているらしい。よかった。

 試合終わりで疲れているだろうに、殊勝にも現地ホテルから報告配信をしてくれるKOGさんを見て、私は、この大会で何かが起こればいいなと思っていた。あまりにも漠然とした願いである。しかし、実際のところそれ以上でも以下でもなかった。あえてもう少し言い換えるのであれば、一人の成人男性がホテルのベッドに横たわる配信を深夜に見ている私たちにとって、そしてKOGさん自身にとって、何か面白いことが起こってくれればいいなと思ったのだった。

 

 

 KOGさんは一度敗北*2を喫しながらも、その後勝ち残り、トーナメント上の歩みを進めていた。

 

 画像に写っているのはえいたさん。そして、どぐらさんである。このときの私の感情は説明するまでもないだろう。えいたさんには大変申し訳ないが、どぐらさんに勝ってほしい。なぜならその方がきっと面白いからだ。

 どぐらさんがCRカップに参加していたから、KOGさんはホロライブに出会った。KOGさんがホロライブに出会ったから、私はKOGさんに出会った。そうすると、今私がEVOを見ているのもどぐらさんがいたから、ということになる。

 また、特にホロライブが絡む場において、KOGさんにとってどぐらさんは(プロレス的な意味で)宿敵でもある。

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 そのような二人が大きな舞台で戦う。それはなんとも面白い展開ではないか。願わくば、その様子が配信に乗ればなおのこと面白い。私は多方面にドキドキしながら、えいたVSどぐらの戦いを見守った。

 

 一本を先取したどぐらさんだったが、対するえいたさんも粘り強い戦いで一本を取り返す。

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 いい表情だ。

 その後互いの奮闘の結果、どぐらさんが勝ちを得た。この日、一体何人が望んでいたのかはわからないが、少なくとも私にとっては待ち望んだ結果だった。

 どぐらVS小路KOG。はたして配信はあるのか。ないかもしれない、あってほしいと祈りながら、私は画面上のtwitchを穴が空くほど見つめていた。そしてついにその時はやってきたのだった。

 

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 壇上でグッズを掲げるKOGさん(とそれに付き合ってくれるどぐらさん)を見て、私は自然と笑顔になっていた。CRカップから足掛け約1ヶ月。ホロライブと小路KOGさんを取り巻くストーリーが、ここで結実したように感じたからだ。

 CRカップがあったからKOGさんはホロライブに出会った、とは先ほど述べたとおりだ。のみならず、相手がどぐらさんでなければ、果たしてグッズを掲げられるような雰囲気だっただろうか。EVO現地の雰囲気は知らないが、例えばこれまでに全く関わりのないような相手だった場合、多少なりとも憚れるような気がしてならない*3

 また、それだけではない。上記動画で解説者が言及しているように、今年のEVOでは、ホロライブをテーマにした格ゲーである『Idol Showdown』の大会も行われていた。つまり、EVO自体にホロライブ(あるいはVTuber)を取り扱う素地が形成されていたのである。グッズを持ち出すに当たっては、またとない機会だったと言えよう。

 試合の内容といえば、門外漢から見てもどぐらさんの強さが光った。KOGさんの攻撃は通らない一方でどぐらさんの攻撃は通る。その壁は高かった。KOGさんはここで散ることとなった。それでも結果は7061人中の49位。プロの意地を存分に見せたと言っても過言ではないだろう。KOGさんに強さがなければ、この日の熱狂もなかった。そういった点も全て含めて考えると、あまりにできすぎた、全てが噛み合った結果のように思われたのだった。

 

 

 初期の勢いは落ち着きを見せつつも、今日もKOGさんの配信には約1000人が訪れている。私と同じように定着した民がいるのか、未だ一過性のムーヴメントが続いているだけなのか。また、新旧の住民がうまく混ざり合っているのか、それとも完全に入れ替わってしまったのか。実際のところは分からない。今思えば、一人の面白い人が世界に見つかる過程を楽しんでいた、とも言えるのだろう*4。結局それはVTuberに求めている要素の一つと同じだったのかもしれない。

 非常にいいものを見られた。そう思って、まだ余韻に浸りながらこの文章を書いている。この余韻を活かすにはどうしたらよいだろう。そもそも余韻は活かすものではない。しかし、何かエネルギーがたぎっているときには、動いたほうが無駄がない。今日も生活を頑張ろう。それでもまだエネルギーは少し余っている。であれば、とりあえず重い腰を上げる準備だけはしておこうか。そう思ってスト6をDLした。

 

 

 でもまずはレインコードをクリアして……そうこうしているうちにアーマード・コアが来るし……スターフィールドもイースもあるし……。と思いながらワールドツアーを始めた。ルークと戦うだけで脳がオーバーヒートした。すでに前回のプレイから10日以上が経っている。はたして今後、ネット対戦にまで辿り着くのか。それも誰にも分からない。

 

*1:さらに言えば異性との共演もほぼない中で

*2:一般的な格闘ゲームの大会(トーナメント方式)の場合、一度敗北してもその段階で脱落とはならず、敗者側のトーナメントを進むことになり、最終的には勝者側のトーナメントを進んだ相手と戦うことになるらしい。

*3:付言すると、KOGさんの懇願を経てどぐらさんが運営に掛け合った結果として配信の壇上に上がることができたとのことであるから、その意味でも間違いなく重要な分岐点であった。また、ここに至るまでに(スト6では)配信に乗らなかったのも功を奏した。あり得る中で、一番良いタイミングで配信に乗ったと言える。

*4:格ゲー界では名の知れた方だったことからすればこれは失礼な物言いかもしれない