死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

ダンス(プラクティス)動画の魅力

 アイドルなり声優なり何なりのダンス動画が好きなのは、それが客席からの視点に近いからだろう。定点カメラで演者全体を映す画角は、「最前列ではない」客席から見えるステージの姿に似ている。

 単に距離感の問題だろうか。言うまでもなく、私の横に人はおらず、視界の一部が誰かの後頭部で占められることもない。けれども、会場に身を置いているように感じられる。

 あるいは、「視点が固定されている」のが重要なのかもしれない。例えば、BDに収められたライブ映像は、プロの手によって、その瞬間瞬間が最も魅力的に映るように編集されている。それはお金を取れる一つの作品として完成している。しかし、反対に言えば、編集側によって、見るべきポイントを指定されているとも捉えられる。

 翻って、実際の劇場ではどうか。何を見るべきかはすべて自分の手に委ねられている。何か決定的な場面を見られるか、それとも見逃すかは自己責任だ。さらに言えば、そのような場面を必ずしも目に収める必要はない。多くの人がAに視線を向けているなか、自分だけはBを見ていたってよい。

 住み分けなのだろうとは思う。そういう楽しみ方をしたいのであれば、現場に足を運べばよい。いたって簡明な解決策である。映像ソフトは「残る」ものであるから、最大限に魅力を高めてしかるべきだろう(魅力とは何だという話もあるが)。そのような考え方に、全く異議はない。

 ともあれダンス動画は楽しい。どこを見るのも自分の自由だから。厳密に言えば、限られた角度、限られた範囲内の自由ではある。それでも視聴者側の手に委ねられているという点には違わない。その上、すぐに見直すことができる。払うべき自由の代償も、ここではカバーされているのである。こんなにいいとこ取りのコンテンツがあろうか。だから私はダンス動画を見る。今日も今日とて見る。

 

 と、「ダンス動画」なるものの説明を一切せずに進めてきたが、具体的にはどのような動画のことを言っているのか。紹介するついでにその魅力を共有していこう。

 

 

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 ご存じi☆Risである。2018年当時、WUGの動画を漁る中でたどり着いたこの動画は、私にとって衝撃的だった。その理由は、この類の動画を初めて見たということもたったが、純粋に「めっちゃ踊ってるやん」と思ったからだった。

 そもそも、アイドルグループのダンスをしっかりと見たことはなかった。だから余計にそう感じたのかもしれない。めくるめく変化するフォーメーション。なぜ足がもつれないのか分からないステップ。強調された静と動。「こんなことをやっているのか!」と驚いた。はへぇ~という感じである。

 そして、それらを楽しめるのは、なんと言ってもカメラが固定されているからなのだと気づいた。全体を見渡せるからこそ、私はそのすごさを知ることができたのだ。

 

 i☆Risはそのほかにも過去から多数のダンス動画をアップしており、avex様様である。しかし近時では「Dance Music Video」として、定点カメラではなく、ダンス+編集な動画を展開している。

 

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 個人的には「なんでや!?」であるが、コメント欄を見ると概ね好評なので、きっとそういうことなのだろう。

 

 

 

 先ほど述べたとおり、フォーメーションチェンジの動きがよく見えるのは、ダンス動画の魅力の一つであるが、ユニットでなければその魅力が落ちるかと言えばそうでもない。踊っているのが一人の演者であっても、その姿自体から魅力は感じられるものだ。

 

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 Run Girls, Run!は3人組の女性声優ユニットだが、本動画はメンバーの一人である厚木那奈美さん単独出演である。3人で踊っている姿を見たいのはもちろんだが、だからといってこの動画の価値に変わりはない。

 非常に重力を感じられる動画だと思うのだ。厚木さんの動きが重々しいという話ではない。ライブや演劇をステージ近くで見ると、演者の動きに応じて足音が聞こえてくるものだ。ドタドタバタバタ。軽やかに見える姿にも、実際には重みが伴っていることを知れる。むしろ重みがあるからこそ、技術を駆使してより軽々しく見えているのかもしれない。質量があると実感できるがゆえに浮いて見えるのである。

 また、i☆Risの動画と比較すれば、衣装が持つ力も実感できる。スカートはそれ自体に浮遊感を伴い、演者の足取りを更に軽く見せる。かわいいだけではないのである。

 

 

 一人で踊るのもよい。しかし、人数が増えると画面が華やぐのもまた事実である。

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 アニメを未視聴なのにダンス動画だけ見てもいいのか? 多分大丈夫だろう。ラブライブはそんな狭量なコンテンツではない。このような消費者も受け入れてくれるはずだ。

 スペースの都合上か、3つのカメラを切り替えながらの動画となっているのは若干残念だ。しかし、開始17秒頃の靴のグリップ音でお釣りが来る。そして、スタジオ内で流れる音楽をカメラを介して直で録っているのも嬉しい。実際の会場での聞こえ方に近しいからだ。ライブ感がある。

 

 

 音という点で言えば、他にも魅力的な動画がある。

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 今をときめくBE:FIRSTだ。さすがSKY-HIさんや! 視聴者が求めるものを分かっておられる。そういえばフランシュシュと共演もしてはりましたね。

 七人のパフォーマンスが高いのは言うまでもないが、彼らが踊ることによって生じる環境音に、心が昂ぶる。なぜなら、七人がそこにいると感じられるからだ。その上定点カメラだなんて。しかもカメラと演者との間に比較的距離が空いており、あたかもステージと客席との関係性をイメージさせる。さらに4K画質も用意されている。いたれりつくせりである。

 文句のつけようがないが、贅沢を言えば、FPSの高いバージョンもあると嬉しい。かえって映像に重みがなくなってしまうことを懸念しているのかもしれないが、ヌルっとした質感を楽しみたい気持ちはやはりある。逆に4Kじゃなくてもよい。フルHD+60FPSでよい。よう知らんけど。

 動画を漁ると分かったのだが、実際のところ画質のほうがオプションが充実している場合が多いと思われる。たしかに、優先されるべきは解像度で、それが高ければ何も問題はないのかもしれない。でも見たいなあ……ヌルヌル動くダンス動画……。

 

 

 

 

 えっ? 60FPSでダンス動画をアップしている声優アーティストユニットがいるんですか!?

 

 

 

 

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 本日大阪でライブがあるDIALOGUE+である。60FPSのほうが現実の動きの質に近いと思うのだが、実際のところはどうなのだろう。

 ユニットのダンスを見る楽しさとはなんだろうか。個性を感じられるところだと私は思う。あらゆる意味において個人的な感覚でしかないのだが、ダンスというのは、揃っていなければ汚く見えるが、揃いすぎていると不気味に見える。

 パフォーマンスとして、根っこの動きは一致している必要があるものの、仔細な部分は演者の特性が出てよいはずだ。むしろそうすることで、不思議な調和が生まれる気がする。完全に揃っていないからこそ、ユニットとしての一体感が保持できるのはないかと思う。根拠はない。

 その意味で、DIALOGUE+のダンスは見ていて楽しい。同じ動きをしているのに十人十色。パフォーマンスの所作から、自然と自分好みのが演者が絞られていく。個性が現れた上でのハーモニーっていいよね……いい……あやふわアスタリスクの振り付けが頭から離れない……。

 それと同時に、ユニット全体の魅力も伝わってくる。やはりダンス動画は、数あるPR手法の中でもかなり有用なのではないか。あらゆるユニットは軽率にダンス動画を出してほしい。とはいえ、誰彼もが積極的にそうしないということは、メリットばかりではということなのだろうが。WUGちゃんにもこういう動画を出してほしかったね。現実は難しいね。