本格的に冬到来、年末進行で忙しくなる今日このごろ。こんなときはWUGちゃんのことを考えるのがぴったりですね。というわけで本記事は『Wake Up, Girls! Advent Calendar 2020』13日目の記事です。昨年に引き続き参加させていただきます。(企画:ておりあさんに感謝)
なお、昨日はあかとんぼ弐号さんがご担当でした。明日はうっちゃんさんです。
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枕代わりの前段
Wake Up, Girls!(WUG)に関連した題材で落語を作ってみたいと常々考えており、もろもろやってみてはいたのですが、やはりキャラクタを動かしたり、演じたりするのはなかなか難しいもので、長らく作業が進まないままにありました。
当初アドベントカレンダーには別の記事で参加するつもりでしたが、こういうことでもないと一生作らんだろうからやってみよう、と意気込んだまではよかったものの、残念ながら、そう思ったところで勝手にでき上がるものでもありません。さてどうしたものかと頭を捻る日々を過ごした後、とりあえず自分の脳内会話をもとに、誰かがWUGを語るという体での会話劇を作ってみよう、との結論に落ち着きました。昔から、落語と会話劇の境界については実際のところよく分かっていませんが、これで落語を名乗るなと言われると返す言葉もありません。
言うまでもなく本作はフィクションであり、登場人物のモデルは現実に存在しません。彼らの発言にムッとするところがあったとすれば、それはひとえに私の責任です。解釈違いがあった場合も含め、先にお詫び申し上げます。まことに申し訳ございません。
素人の落語を15分以上聴くのは苦痛、10分が限界とは昔個人的によく言われた記憶がありますが、結果的に15分以内には収まりました。が、それと面白いかどうかは全くの別問題です。また、話の展開や言葉の一つ一つにはさらなるブラッシュアップの余地があり、特に後半は駆け足感が否めず、正直言って雑な仕上がりです。技術面でも、もっと稽古せえの一言ですが、「未完成でもいいから外に出していけ」と、今週のしいたけ占いでも言われていたので、そうすることとしました。いつもどおり生温かい目で見ていていただければありがたい次第です。
収録はiPad mini一本で行われており、リップノイズ・ホワイトノイズ等々、聞き心地の点でもなかなか険しいところです。常套句ではなく、真に「お聞き苦しいところもあるかと存じますが…」と頭を下げるほかありません。精進して参る所存。
コロナ禍を全く反映しておらずで恐縮ですが、おなじみのファミレスのテーブルに、二人の男が腰掛けている姿を想像してもらえればと思います。またこんな風に気を使わず他人と会って楽しく話せる日が来ることを心から願っている、などという高尚な思想で場面を設定したわけではなく、結果的にこうなった以外の何物でもありません。
それでは言い訳もほどほどに、一席お付き合いいただければ幸いでございます。
本編
台本
A おおこっちこっち。よう来てくれた。いやあ悪いなあこんな時間から急に呼び出して。
B いやいや、それはいつものことやから別にええけども、何や電話でえらい切羽詰まった感じやったから心配したんやで。何ぞあったんかいな。
A いや、それがやな、もう一人で考えても考えてもどうにも答えが出えへんことがあってなあ。
B えらい悩んどんなあ。もう悩みに悩んどるっちゅうのが顔中に出とるで。
A いや、そうやねん。自分でもどうしたらええんか分からんでな。せやから一番信頼できるお前を頼らしてもらおうとおもたわけや。
B はあ、そら光栄な話やな。いやいや、俺も別に人生経験が豊富っちゅうわけやないけど、他人やからこそ、気づくこともあるさかいな。仕事に恋愛、人間関係、まあまあ金の話以外やったら、もう何でも言うてくれや。
A ああほんまありがたいわあ。ほんなら早速やけどな、何や言うたらな……Wake Up, Girls!の話やねん。
B え?
A いや、せやからな。WUGちゃんたちも…いつか結婚するんかなあっていうそういう話やねん。
B えぇ……お前なあ、急に呼び出して何や思たら、人様の、それも解散した女性声優ユニットのメンバーの結婚がどうのこうのて…ええ年した大人が何を言うてんねん。そもそもな、結婚なんちゅうのはするもせえへんも本人の自由で、外野がごちゃごちゃ言うことあれへんし…
A あっ! ちゃうちゃうちゃう! そっちやないねん!
B ほなどっちよ
A いや、アニメの方のな、キャラクターのWUGちゃんの7人がな、やっぱりいつか結婚すんのかなあ~っていうのがもう考えても考えても分からんくてな
B ああ、キャラクターのほう。それやったらまあ……と言いたいとこやけど、それが考えても分からんって、どういうことやねん。
A せやな、自分で言うときながらわかりくにいなあ。あ~もっと言うとな、別に結婚がどうこう言う話でもないねん。
B そうなん? ほんなら何やねんな。
A うーん、そうやなあ。難しいな。何から話したら……あ、ごめんごめん。よう考えたら、ちょっと話が飛んでもうてたな。一から話すわ。いやな、アニメの新章があったやんか。その新章が終わった後のWUGちゃんって何してんねやろなあっていうのを、大体3日考えて4日寝かせるっていう感じをずーっとやっとんたんよ。
B はあ…それは楽しい一週間やねえ。
A うん。でぇ色々考えとってなあ。いや、例えばやけどな! WUG新章の後のランガちゃんの姿を新作アニメで描こうとするやんか。
B はあはあはあ。まあそういう、アニメランガールズランを望んでる人もいっぱい居るわいな。
A せやろ? 俺もそのうちの一人や。でもここで難しいのは、現実のランガちゃんが、もうだいぶ成長してもおてるやんか。せやからな、ランガちゃんの成長譚を一からアニメで描くっていうのは、多分もうせえへんのちゃうんかなあと思うねん。
B そこはお前もう、そもそも”ない話”をしとるんやから、変に実際のコンテンツ展開を考えんでもええんとちゃうの。
A いや、色々考えた結果な、やっぱりこの作品、現実とのリンクは無視でけへんのかなあとおもて。
B ああそう…そういうとこ律儀やねえ。まあええけど。ほんでそのリンクを考えたらどうなったん?
A いや、多分やけどなあ、新章から3~4年は経っとるんちゃうかなあって。ほんでランガちゃんは、その間、日々仙台を中心に着々と仕事を重ねていて、先輩と同じように東京行ったり行かなかったりしながら研鑽していってると。ほんで、多少なりともキャリアを積んどるわけや。そういう状況から一話が始まって、キャラクタの顔見せと状況の説明をして、ほんでその後何かしらの壁にぶち合たる展開になるんとちゃうかなあ。多分…3話ぐらいで。
B 三話ぐらいで。
A そう。ほんで、三人で相変わらずのあの狭い事務所に集まってウンウン唸ってる。ほんで、そうしてるところに事務所のドアがノックされるんや。「こんにちわ~」という声に応じて、三人の視線がドアの方に向く。ほんならそこには、見覚えのある女性が立っていた。
B ああ、なるほどなあ。ほんでその女性というのが、WUGちゃんというわけやな。
A おっしゃるとおり! さすが、よう分かってらっしゃる。そういうことなのよ。
B せやけど、あくまでもこの想定ではランガちゃんが主人公なんやろ。ほんなら、あんまりWUGちゃんを出すのはよろしくないっていう話もあるんとちゃうか。
A それもそうなんや。前作の主人公たちを新作シリーズで出す・出さへん、これは議論になりがちなとこやけども、個人的にはランガちゃんの導き役としてWUGちゃんにも出てほしいと思う。
B Twinkleポジションっちゅうことか。そうなると、この場面は大事やなあ。七人の内、ここで誰が出てくるのがええんか。
A そういうこと! もう全部わかってるやん! ありがとう!
B …何か知らんけど、これでお礼言われても嬉しくないなあ。
A そんなこと言うなや。とにかくな、今お前が言うてくれたとおり、ここが一つ難しいところなんや。展開的にも、現実的にも、七人の内、誰に出てきてもらうのがええんか。
B なるほどなあ。分かった分かった。話題の内容はともかくとして、このことで難しい顔して悩んどったわけや。
A ……いや……ここまで聞いてもらっといてなんやけど、これやないねん。
B え? ちゃうの? ランガちゃんの新アニメの第三話でWUGちゃんのうち誰が事務所を訪ねに来たらええやろかっちゅうことで悩んどったんちゃうの?
A ……ちゃうねん
B えぇ……結構長いこと喋っとったで? ほんなら何やったん今の話。
A うーん……話の導入? いや、待って待って待って、そんな怖い顔せんといてえな。いや、今の話と何の関係もないっちゅうことはないねん。むしろもう、関係しかないねん。最初はな、ここで誰が事務所に来るんが自然かなあって考えとったんや。例えばな、家から近いし、普段からちょくちょく藍里が顔を見せに来てそうやなあとか。展開としては、夏夜ぐらいにばしっと締めてもらったほうがええんかなあとか。いや、歳を重ねた奈々未が、先輩として何か言うてくれるんちゃうかとか。もとい、そもそも第3話で誰が出てきたら旧作ファンは喜ぶかなあとか、そういうことをな、考えとったんや。でもな……そうしてるうちに、ふと思たんや。誰が出てくるとかそんな話以前に、そもそも将来のWUGちゃんて、一体何してるんやろなあって。
B 何してるんやろなあっていうのは、要はもう解散してるんちゃうかとかそういう話?
A そういう話も含めて。
B なんでまたそんな悲しいことわざわざ考えんのよ
A いやいや、解散のことで言うたらな、別に俺はそれを悲しいこととは捉えてへんねん。そんなん、時間が経ったら変わるのが普通やないか。最初はWUGで頑張ろうって思っとったけれども、心境も変化するやろ。それに、時間が過ぎていくなかで、考えが変わるっていうのもまた、人間らしいんちゃうかと俺は思うんや。
B まあそれはそうやなあ。年を取るのも、考え方変わるのも、ある意味生きてる証みたいなもんやからなあ。
A そういうことなのよ。変わらんものももちろんええけど、変わっていくものにも等しく価値があると俺は思う。
B はあ、ええこと言うやんか。ええこと言うてるところで悪いけど、ほんで、何で結婚の話になったん?
A いや、ここまで来たら単純な話よ。もちろん、そらもう結婚がどうこういう時代やないっちゅうことは分かっとるけれども、3年後・4年後言うたら、もう夏夜なんて26とか7やろ? 俺がおる会社の人らなんか、そこらの歳でバンバン結婚して子どもも生んどった。 せやから、みんなもそんな風になっていくんかなあとおもて。
B 業界がちゃうやろ? おるか二十代で結婚して出産するアイドル?
A うーんやっぱりそうなんかなあ。でも、何かこうWUGちゃんって、自分らで「これが必要や」とか、とにかく「こういうことしたい」と思ったら、何でもすると思うねんな。
B それはそうかもしれん。でもどうやろなあ。ほんまに誰かが結婚するてなったら、丹下社長はなんて言うやろか。
A あ、そういう話もあるなあ。そこは芸能事務所代表としての顔と、親の顔の2つがせめぎ合うことになるんかなあ。うーん難しいなあ……例えば、例えばやで、真夢がWUGのユニット活動中に結婚ってなことを言い出したとする。
B また急な話やねえ
A いや、でも真夢は「アイドルである前に人間や」って言うてたぐらいやし、身近で色恋沙汰があったからこそ、逆に自分がそういう場面に置かれたら、真正面から色々考えるんとちゃうかなあ。ほら、「自分を幸せにするには」っていう意識も強いし……そうやで! かつて白木さんに言うた言葉を、自分の中でもう一回どう解釈するんか。ほんで、真夢が結婚すると言い出したとき、メンバー、周りの大人たち、そしてワグナーの反応はどうなんか。果たしてアイドルのあるべき姿とは……みたいな。これで一本劇場版作ったらどうやろか。
B また荒れそうなテーマやねえ…。もう自分から燃えに行くのはやめとこうや
A たしかにな。この時代にわざわざやる必要はないか……。でも実際のところ、あの世界やったら普通に祝福されるだけのような気もするなあ。何かもう、ファンも含めて、関係者みんなの娘だか姉弟みたいな存在になってる気がする。
B たしかになあ。まあ、それこそ実波が結婚したら、石巻市総出でお祝いしそうなイメージがあるな。
A せやなあ……実波が結婚かあ……あかん、想像するだけで涙でてきたわ。そんなんもう…大人になったんやねえって、磯川のおばあちゃんと一緒にお祝いしたい。
B 急に泣きなやもう…はいこれで拭いて。
A ああありがとう……でもな、泣いてばっかりやおられへんで!
B 次はどうしたん
A 藍里が難しいと思うねん
B 何がよ
A 藍里の場合はな、実家をどうするかっていう問題があると思うねんな。いや、弟さんおるし、他の従業員さんも居るかもしれんから、一概には言われへんけれども、可能性の一つとしては、長女である藍里が店を継ぐという選択肢が残るんちゃうかと思うねん。もちろん、あのお父さんがやで、そんな自分の娘に対して「絶対にこの仕事を継げ」みたいなことを言うとは思われへんから、そういうイベントはないと思うねんけど、でももし藍里が自分の意思で店を継ぎたいと言うた時に、逆にそれを否定する人でもないと思うねんな。ほんなら人生の到達点の一つとして、藍里の中には「自分は店を継ぐんや」っていう気持ちが、ないことはないんちゃうかと思うねん。でも、芸能の仕事もやっぱり大事で、最終的にはどっちをとるか、いやどっちもとるんや!と一旦はなりつつも、両方中途半端になってしもたらどっちにも失礼ちゃうかと考えて、やっぱり自分は自分を育ててくれた店をやっていく、という気持ちになるんやけれども、ふと自分のやってきたアイドルの仕事を振り返った時に、これだけのことを自分はやってきたんやと感じて、意味のある仕事なんや、やっぱりこのまま自分は芸能界で生きていこうと…
B 長い長い長いもう……つまりどういうことよ。
A …幸せになってほしい
B …結局そこに落ちつくわな、
A そういうことやで。俺はな、とにかくみんなに幸せになってほしい。健康で長生きしてほしい。もうそれだけなんやほんま。
B せやなあ…。それには何の異論もないけど、でもな、お前はもう少し、自分の幸せについて考えてもええと思うけどなあ
A な…何や急に
B いや、お前いっつも他人に対して「幸せになってほしい」とか、「長生きしてほしい」とか、「生まれてきてくれてありがとう」とか言うてるやんか。いや、そうやってな、誰かの幸せを願える、ありがとうを言えるっちゅうのは、もちろんお前のええとこやけどな、俺はお前自身もちゃんと幸せになってほしいと思ってるよ。
A どうしたんそんなしんみりしたこと言うて
B いや、ほんまにほんまに。実際そうなんやって。WUGちゃんが解散したときもや、あのときもお前、「とにかくみんなこれからも元気でいてほしい」とか、「幸せになってほしい」とか、そんなことばっか言うとったけど、お前自身がな、いや俺ら自身がやな、幸せで元気でいとかなあかんのやで。そうやないと、もし7人が帰ってきたときに、出迎える人間が一人もおらんかったらどないすんねん。まあ俺も人のことは言われへんけどな。アニメキャラの心配するのも全然ええと思うけど、自分がこれからどうやって歳とっていくんか、もう少し自分のために時間使って考えてもええんとちゃうか。
A お前はほんまに、いつもええこと言うてくれるなあ。いやいや、俺も分かってるよ。他人のことばっかり言うとるんやなくて、自分も頑張っていかななあって。でも、そう言ってもらって、改めてやっていかななあて思ったわ。今日は付きおうてくれてありがとうな。気づかんかったけど、もうこんな時間なんやな! そろそろ帰ろか……ああ! すまん。今日な、このためだけにお前のこと呼んだわけやないねん。
B ああそうやったん?
A そうやねん。もう一個な、お前に相談したいことがあってな、まだ時間いけるか? いや、これもなあ、もうずーっと頭悩ましてることでな…。
B ああ、もうそんなん気にせんでええよ。乗りかかった船や。何でも言うてくれ。
A ありがとう! いや、何や言うたらな……I-1Clubの話やねん。
B え?
A せやからな、I-1Clubで一番最初に結婚するのって、誰やと思うっちゅう話やねん。
B …はあ……お前なあ……さっきの今でまたそんな話すんのか? ほんまにもう……今夜は長くなりそうやな。
了