何でもいいから1週間に1冊ぐらいは活字の本を読もうな、ということで日々を過ごしているのだが、その内記憶に残っているものについて、折角なのでネタバレを含まない程度に感想でも書いておこうと思った。なお、来月以降も続けるかは不明。
『ゴーストハント』のアニメから小野不由美さんを知ったこともあり、小野さんと言えばホラーという印象を持っている。逆に『十二国記』を読んだことがないので、ニワカもいいところだ。ともあれ、ホラーの新作が出たらとりあえず買う。
本作は一応シリーズ二作目だが、共通しているのは舞台と主人公(とその周辺)のキャラクタだけで、作りはオムニバスのためこちらから読んでも大丈夫。怖いは怖いが、おどろおどろしいわけではなく、読後感はすっきりとしている。そうじゃないのもあるけど。少なくとも、読んで気が重たくなるような内容ではない。涙を誘うものもある。
個人的には、ホラー小説を読むのは、直接的なホラー要素を求めてというかは、怪異の正体が何であるのか、その謎解きの過程を楽しむために読んでいるので、そういうのが好きな人はすいすい読んでしまえると思う。これは小野さんの作品全般に言える。
一編につき一家庭の物語が描かれる。霊現象と現実の問題が入り組んで、何やらヤバそう or これからどうしようというときに、寺生まれのTさん的存在の営繕屋・尾端さんの手によって真相が明らかになる…というのが基本的な流れ。営繕屋が登場したときの安心感がすごく、また必要なことだけやってスッと帰っていくタイプの人なので格好いい。
営繕屋というだけあって、住居やモノについての話が多い。尾端さんも、何か特別な儀式や祈祷で解決するのではなく、傷んだ箇所を修繕するみたいな、シンプルな施しで物事を解決する。この無駄に大げさでないのがよい。しつこくない。何杯でもいける。今後とも定期的に書いていただきたいなあと思う。あと、いつの日か『ゴーストハント』の新作を……と結構ずっと思っている*1。
追伸:ゴーストハントのドラマCD付コミックスを買いました。思ったらすぐに買える。いい時代ですね。
東京湾の向こうにある世界は、すべて造り物だと思う (新潮文庫nex)
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友人の友人の友人の作品ということで読んだ。高校時代、部活動で一緒にバンドを組んでいた女の子が突如命を落とし、社会人になった今、主人公の前に幽霊になって現れるという話。
全体的にあっさりとしていて、大きな謎解きとか、知られざる過去とか、そういうのはない。あるのはただの青春である。
なぜ死んでしまったのかはたしかに一つの謎解き要素ではあるけれど、それがメインというわけでもない。じゃあ何が主なのかと言えば、やっぱり青春だと思った。または神津島。
全編を通して爽やかな風が流れているというか、こうスッキリとしている。全体的に軽いと言う人もいるかもしれないが、私は嫌いじゃなかった。特に、希死念慮に取り憑かれていた人間が、死後になって生きたいと思う過程が瑞々しくてよかった。あるのはただの青春である。そういうのを書きたかったのかな。
マシーナリーとも子さんの記事から興味を持って読んだ。古き良き洒落怖的な作品。2014年に発刊されたようだが、今もなおネット上での考察が盛ん。実際にあった事件の資料をまとめたものという体。もちろん体ではない可能性もあるが、そうだとするとひたすらに怖いので考えない。なお、考察をトゥギャっているのは作者であるとか、そもそも作者は三津田信三さんであるとか言われているが、定かではない。
4編のオムニバスで、それぞれの作品には繋がりがない……と思われる一方で、実は全て繋がっているという考察もある。それが物語を解く鍵なのかも分からない。なので、とりあえずは深く考えず、通しで読むのがいいと思う。
上記記事でも言及されているが、電子書籍ならではの趣向が凝らされており、さらに言えばならではの嫌らしい仕掛けもある。先んじて言っておくと、私のように耐性のない人は、『みさき』において気をつけながらページを進めたほうが良い。でなければ、手に持っている端末を放り投げることになる(一敗)。意味ありげな空白のページには気をつけろ。
『綾のーと。』は、世の中に数え切れないほどある、更新の止まったブログの裏側で何があったのかを取り扱った話だが、当該ブログは閲覧パスがかけられた状態で現実に存在しており、そのパスが何なのか検討が続いているところ。また、作中に登場する動画も現実のYoutube上に存在し、なかなかに気味が悪い。
正直なところ、二度とは読みたくないし、何だったらさっさと端末上のライブラリから削除したいぐらいだが、もう少しこの世界についてしっかりと考えたいとの想いが、その行動を踏み止まらせる。かといって、ファイルを開く勇気もない。その感情は、それこそ三津田さんの『どこの家にも怖いものはいる』を読んだ時と同じだったりする。まあもう少し時間は要りそう。
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5年ぐらい前に買ってようやく解き終えた。普段、接続詞を感覚的に使っているので、一回カチッと考えてみるかと購入した本(だったと思う)。
そんな深く考えなくてもいいじゃねえか、と思う自分もいるが、「読む人からはこういう風に解釈されますよ」の様々な例が挙げられているに等しいので、ああそうか~と実感しながら解き進めた。伝えるって難しいね。
柔らかくて楽しい文体ではあるが、やっぱり集中力は使うので、それなりの環境で取り組んだほうがいいと思います。
話題だったので読んだ。気分が暗くなる。
根本的には、「自分には関係ない」という思い込みを捨てろということかと考えている。よくある話だが、今現在に自分がその立場に置かれていないからといって、将来的にもそうかは全くわからない。そして、その世界は思ったより近く、案外簡単に移ることができる。「できる」というか、移ってしまうことがある。
結局、中流家庭以上が享受している豊かさは、そこからさらに下の層の労働者に支えられていて、そんな状況で労働者が資本家(とまとめてしまうのは雑にしても)と渡り合うには徒党を組むしかないのだが、(この本は英国の話なので特に)労働者の多くが移民(≒短期労働者)であることや、個人主義化の進みから、そうすることが難しくなっている。個人が個人のみを最適化するなら、余計なことをしないほうがいいと考えがち。読めば読むほどにお腹が痛かった。世の中どうなるんでしょうね。*2
以上でした。9月は何も考えていませんが、とりあえず米澤穂信さんの『Iの悲劇』は買います。何かおすすめの本があったら教えて下さい。(いつもの申し出)