死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

足先が冷えると冬が訪れカメムシは消える

 寒い、と思ったのはもう2,3日以上も前のことだが、掛け布団なしでは肌寒くなったあたりから、どうも怪しさを感じてはいたのである。風呂上がりのドライヤーで汗をかかなくなり、トイレできばっていても息苦しくない。夏が終わる終わると声高に叫ばれながら、やっぱり終わらないを繰り返し、半ばオオカミ少年と化した地球くんが、汚名を返上しようと本領を発揮するのも無理からぬことだろう。最近のトレンドは秋をすっ飛ばす点にあり、もうそろそろこの流行りも終わってほしいものだが、宇宙界隈ではまだ主流なのか、それとも太陽系界隈が遅れているだけなのか、この先もしばらくこの流れは続きそうである。

 体の冷えは末端からやってくる。足先が冷たい、と気づいた時にはもう遅かった。一度冷えると温めるのは大変手間だ。運動するか湯につけるか。どちらも億劫である。冷えは冬を連れてやってくる。冬が冷えを連れてやってくるのかもしれないが、冷えの方が先な気がする。日が短くなった、空気が乾燥してきた、マスクを付ける人が増えてきた。様々な目印はあれど、足の冷えは中でも明確である。足が冷えると体が冷え、体が冷えるとトイレの回数が増える。冬は嫌いではないが、それは現象として好きというだけで、冬の生活は嫌いである。筋肉の動きは悪くなり、何をするにも億劫だ。日常生活で寒さがプラスになることはない。その乾燥具合を少しでも夏に分けてやったらどうだろう。

 家を出ると強風が吹きすさんでいた。寒風である。顔をしかめながら目を凝らすと、ここ最近と辺りの景色が変わっていた。カメムシがいなくなっていた。あれだけ日々に壁を天井を埋め尽くしていたミドリの物体は、綺麗さっぱり姿を消した。今年大量に発生したのは、猛暑のせいとも言われていた。冬が来れば、カメムシは山に帰るらしい。とすれば、やはりもう冬なのだろう。視界を占めていた緑色が、急になくなってしまうと戸惑うものだ。そういえば、カメムシは夏の季語なのだろうかと思ってネットを叩くと、歳時記的には初秋らしい。秋がなくなったのか、単に秋が暑くなったのか、はたして秋は夏と冬のどちらに吸収されるのだろうかとうつつを抜かしながら歩いていると、背中に汗が流れてきて、何だまだ夏ではないかと思ったが、そもそも10月で夏というのもおかしいだろうと気づき、結論としてこれは秋であると思い至ったのだった。よく見ればまだカメムシもいる。