死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

8月に読んだ本など

 通勤時間が増えると読書時間も増えるらしい。痛し痒しだね。

 

ガダラの豚 I (集英社文庫)

ガダラの豚 I (集英社文庫)

 

  日替わりセールで購入したもの。そういえば中島らもの本読んだことねえな、丁度いいやと思って読んだ。買ってから全3巻と知った。

 VS新興宗教。書かれた当時の時代背景はどうなんだろう。オウム事件があった頃なのかな。

 客観的に見れば胡散臭いことこの上ないし、さらに言えばある程度客観的に自分を見れる人がどうして偽物の奇跡に引っ張られるのか。それはそもそもの常識が違うからだという話。私たち純朴な人間は、「そんなことをやりはしないだろう」との前提でコミュニケーションを行うわけで、だから積極的に他人をだまくらかそうとする人々への耐性がない。結果として、いとも簡単に彼らのことを信じ込んでしまう。

 最初に疑ってかかっていた方が、より反動は強くなる。理論的な人ほど熱心な信者になりうる。ちょうど『完全教祖マニュアル』を読んだ後だったので、なるほどなあと思った。

 と言いつつ、話の肝は新興宗教がどうというよりかは、家族のあり方と超常現象への向き合い方についてか。特にミスター・ミラクルが持つある種の義務感・使命感は今後どうなるのか……と気になるが、そもそも次巻以降にミラクルが登場するのかは確かめていない。今のところ読む予定もない。

 

 

  タイトルに惹かれて読んだ。私はそもそも江戸落語界をほとんど知らない、というか、落語への関わり方としてはせいぜい寄席へたまに足を運ぶ程度のもので、やれあの演者がいいとか悪いとかを語れるレベルではないのだが、そんなでも人の営みの記録として楽しく読めた。

 筆者の趣味からか、談志を始めとする立川流への言及が厚い。それは単に贔屓目によるものではなくて、江戸落語界を必然的にそうなってしまうということだろう。あと読み進めて小朝・圓楽師匠への印象が変わった。

 いかに落語を現代に繋ぐか。単なる伝統芸能の一つにならないようにするか(伝統芸能だってそう簡単になれるものではないけれども)。行き着くところは、見ていて面白いものを作れるかという気がするが、面白いだけが落語でもないと言われれば、それはそうだなとも思う。

 演劇やミュージカルが世に残っている以上、落語が残れない理由なんてないとも思う。いや、一緒にするのは不適切か。しかし、つまるところ「舞台を通して人間を見る」のは同じことだから……。一回でも寄席に行ったらば、少なくとも「古臭い」との感想にはならないんじゃないかとも思うが、そもそも古臭いと感じている人が寄席に足を運ぼうとは思わない気もする。新規に増やすってのはやっぱり難しいんだよね。

 あとはもう少し上方にも触れてほしかったとは率直な感想。

 

 

三体

三体

 

  ついぞ最近に発売された印象だったのにもう一年以上前なんですねとの驚き。SFとは聞いていながらも、どのような内容かは知らずに読んだもの。

 面白かった! SFは好きでも嫌いでもない。ただ、理系的な知識がはびこる作品は容易に何を言っているのかわからない状態に陥るため、積極的に読もうとはあまり思わない。SF要素が含まれている作品は読むが、SFど真ん中な作品は読まない。というか読めない。では三体はどうかと言えば、正直わけのわからないところもそこそこにあったのだが、それらは本作の本旨ではなく、あまり気にならなかった。

 VRゲームとしての三体世界はめちゃくちゃ魅力的だし、文化大革命の描写はすさまじいし、史強はいい兄貴だった。蓋を開けたときの絶望感も心地よかった。どうやってここから逆転するんだよ……と、人間ならではの諦めの悪さを次巻以降で読めたらいいな。でも読むのは最終巻が出たらになりそう。

 フィクションにおいては共通敵に対して地球人が一体となって戦うことはよくあるが、現実の場合一つになれるのだろうかと思った。(なれないからこそのフィクションなのかもしれないが)

 本作を読んでからOuter Wildsをプレイしたら一層楽しかったかもしれない。(なお、未クリア)

 

  6巻まで積んでいたのを一気読み。アニメは見ていないが、あらすじを見たところ3巻がそっくりそのまま差し替えになっている様子。このご時世では映像化が難しかったのか。

 刑事モノの海外ドラマのような作品を……との作者の狙いは完全に成功しているというか、個人的にはCSIとかクリミナル・マインドを見ている感覚に近かった。残り20%ぐらいで展開をたたみかけていく感じ。小説について「スラスラと読みすすめられる」と評するのが褒め言葉になるかは分からないが、私はポジティブに思う。1時間半もあれば一冊読めてしまうが、起伏がしっかりついているので、読み終えたときにはちゃんと「面白かった~」となる。商業的と言えばそうかもしれない。

 ヒロインのティラナについて、シリーズ再始動にあたってキャラ造形を変えた(年齢を低めに設定した)とのことだが、それで良かったんだろうと感じた。いや、以前のティラナは知らないからなんとも言えないけれど。基本的にティラナは強いので、何かしら未熟な要素を取り入れないと、主人公であるマトバの影が薄くなってしまうのかなあと思う次第。

 巻末の原作者/キャラクタ対談も含め、何となく漂うラノベっぽさ(曖昧)に若干の苦手意識を持つかもしれない。そういうものだと言われれば、それはそうである。私が歳をとったというだけだ。

 ところで私は「潜入捜査」系・「他人と心が入れ替わる」系の展開が非常に苦手なのだが、本シリーズでは第3巻と4巻がそういう話だったので少し疲れた。

 

 9月は何冊読めるでしょうか。読書の秋になればいいな。