死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

9月に読んだ本など

 こういうのは始めると大体読まなくなるものだ。その昔、何度読書感想ブログを始めて、何度終わらせたか分からないが、あれは何かそれらしいことを書こうとするからあかんかったのだ。気楽にやったらええんや。

 

木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
 

 AmazonKindle Unlimitedに加入しているのだが、禄に使わずに金を捨てている状態が続いている。じゃあ退会しろよという話だが、漫画の1~2巻も対象になっていて、それきっかけで新たに作品をしることもあるので、なんとなく今に至る。

 光文社の古典新訳文庫は結構な作品がアンリミ対象で、定期的に読もうと思うのだが、往々にして頓挫する。前回から間があって、また始めることにした。

 『鏡の中は日曜日』と『七回死んだ男』を足したような話かと思って読み始めたら、全くそんなことはなかった。でも、一応謎解き要素はある。

 アナーキストたちが作った秘密組織に、警察の主人公が潜入し…という内容。といっても、クライム・サスペンスではなく、舞台が大掛かりなエンタメ作品という印象。

 後半の逃走劇は冷静に考えるとちょっと面白いのだが、読んでいる最中は緊迫感があり、手に汗が握る。こういう逃げ場がない状況下の話は非常にお腹が痛くなるのだ。読んじゃうけど。気色は違うが、龍が如く0とか進撃の巨人を読んだ時の同じ感情を抱いた。

 

 

親鸞 (上)

親鸞 (上)

 

 もう10年前の作品なのか。今リンク貼って知った。

 いつかに祖母が、読み終えたシリーズ一式を贈呈してくれたものの、そう言えば読んでねえなと思って手をとった。一応、家は浄土真宗だしね。

 とはいえ、史実を全く知らないので純粋な創作として読み進めた。普段歴史小説や時代小説を読まないので、貧困な私の頭には三國無双っぽいイメージが湧く。そもそも国が違う。我ながら、せめて戦国無双であってほしい。

 上巻は親鸞こと日野忠範の幼少期を描く。そんな忠範が、3人の河原者、浄寛・弥七法螺房弁才に出会って人生が動いていくのだが、この3人が非常に素敵。本流(あるいは高貴な出)と傍流がいて、後者に属するキャラクタが魅力的であるのは珍しいことではないが、そんな感じ。強くて頼りになる兄ちゃんたちだ。歳は分からんが。

 一方で本流の人間たちが嫌らしいのかと言えばそんなことはない。「この人後で痛い目にあうんだろうな(あってほしいな)」みたいなキャラクタがいない。今のところは。というのも上巻しか読んでいないからである。

 

 

愚物語 (講談社BOX)

愚物語 (講談社BOX)

 

  オフシーズンをまとめて読んだ。本屋に行って新刊が出ていると買うのだが、読むとは限らない。私の中で物語シリーズはセカンドシーズンで止まっていたが、本棚に置いたままではさすがに勿体ないので読むことにした。

 最終巻の結物語が、阿良々木くん+短編集という構成で懐かしかった。面白い・面白くないの尺度ではなく、やっぱりこのスタイルが物語シリーズだという感覚がある。阿良々木くんの一人称が読みやすいのかもしれない。

 それぞれのヒロインと別の怪異を解決していくのも、初期の構成をなぞったものと言えるか。「後日談、というか今回のオチ」の一言がどこか安心する。阿良々木くん成長してないよねとも思う。同じことを繰り返しそうな危うさを感じる。

 現在は大学生編が展開されているらしく、ほへーと思っているが、先の未来を知っていしまった上では、あまり読もうという気になっていないのが現状である。でも、そのうち読むと思う。

 

 

総理 (幻冬舎文庫)

総理 (幻冬舎文庫)

 

 セールの時に買うだけ買って読まない本が多すぎる。本のsteam化。これもそのうちの一冊。発刊当時に本屋で宣伝されていた記憶があったので買ってみたという感じ。安倍首相に密着した当時の動静を客観的に描いたもの、と思っていたのだが、どちらかと言えば一記者の目から見た主観的な物語と感じた。内容の真偽はともかくとして、読み物としては面白かった。

 途中で消費税増税延期の攻防が描かれるのだが、もう一回同じように戦ってくれればいいのにとは思う。

 余談だが、読み終えてから著者が件の人であることを知った。個人的には、著者が森友問題等々を経た今をどのように書くか読んでみたいと思ったが、その日が来るのかは分からない。とりあえず次はBLACKBOXを読んでみようか、と思っている。

 

 

Iの悲劇

Iの悲劇

 

  私がミステリを読む時、トリックを解こうなどとは露ほど考えておらず、また楽しみにもしていない。動機の解明とか人間の感情の動きを見るのが好きなだけである。だから米澤さんの作品は好きだ。

 本作は、無人となった村の再建・Iターン推進プロジェクトを担当する「蘇り課」を描いたもの。名前はこんなだが、ただの役所である。妖怪はいないよ。登場人物はいつもどおりみんな魅力的。女性が一筋縄でないのもいつものこと。

 主人公・万願寺の仕事観がよかった。公務員としての矜持というか。都市と田舎の比較。死にゆく街。とにかく何をするにも予算が足りない! そして、あえてそこに残る選択をするということ。何が正解というわけでもなく、ただ現実はままならないことだけが、はっきりと目の前に突きつけられる。

 帯には、万願寺を称して「出世にしか興味がない」と書かれ、実際作中でも本人は幾度となくその心配をしているのだが、早々に地方公務員としての想いも見えてくる。全く自分本意な人間ではなく、「市民のために」と結構本気で思っている。だからこそ、辛い思いをすることにもなる。

 一番印象的だったのは、個別の事件でも全体のオチでもなく、淡々と描かれる第五章。お仕事頑張ろうと思った。

 一応続編を描ける作りにはなっていると思うし、読んでみたい。でもその時、万願寺はどうなっているだろうか。

 タイトルの「I」が何を指すのか分かっていない。まず思いつくのはIターンか。Iターンプロジェクトに関わる悲劇(喜劇)。各章のタイトルが、「軽い雨」のように形容詞+名詞で構成されているので、この「い」のことかな? とも思ったが、だとしても意味がわからないので微妙である。あとは人称代名詞としてのIか。

 関係ないが、千反田えるは故郷を捨てられるだろうか、と思った。古典部の新作待ってます。

 

 10月は何を読みましょうかね。