死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

誰を救う物語であるか:『Staffer Case』感想

『Staffer Case』をプレイした。面白かった。以下、ネタバレを含む感想。

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「マナ」と呼ばれる超常現象的超能力が当然のように存在している1960年代のロンドンで(主に)殺人事件を解決していくアドベンチャーゲーム。他作品を用いて表現すると、システムは逆転裁判、ストーリー・演出・キャラクター造形はうみねこ、世界観はダンガンロンパのような印象である。テキストの翻訳は全く問題ないので安心。

 サイドストーリーを除いて全5話から構成されており、4・5話が本領である。1~3話はキャラクター紹介的な要素があり(おおむね1話あたり一人)、ちょっとまどろっこしく感じるかもしれないが、プレイするならぜひ4話までは頑張ってほしい。そう言うと助走期間が若干長いかもしれないが、逆転裁判もそんな感じといえばそうである。とはいえ別に1~3話が面白くないと言いたいわけでなく、むしろこの世界の中ではどの程度までの超常現象が認められるのかを理解するのに重要であり、かつそれを踏まえた結果として4話の爆発力が生まれるのに加えて、さらには5話のクライマックスを迎えるのに必要不可欠な積み重ねであるのだが、積み重ねすぎたがゆえに伏線的要素が多くなり、早々に物語の仕掛けを察してしまうところもあった。

 超能力があるという前提なので、当然推理も正攻法ではない方向からの検討が必要になる。ただ、それはそれで一つの確固たるルールになるから、プレイにあたって到底予想もつかないとか、考えようもないといった事態には陥らない。トリックを解き明かすというよりも、誰が何(の能力)をどのように使ったのかを推理することで、自ずと真相を明らかにできる。その意味で、それほど推理が詰まる場面はなく、かといって自明と言うほどに簡単ではなく、良いバランスで物語を楽しく追いかけられるのだが、一点問題があるとすると、ゲームのシステム上を介した推理の正解が分からないことがある点である(推理ゲームの永遠の課題とも言えるか)。

 本作において、推理は証拠品と証拠品を突き合わせることで行われる(なお、証言も調書として証拠品扱いである)。その際、答え(誰が何をしたのか)は分かっているのだが、推理の解答として提示すべき証拠品が分かりづらく、ゲーム側の正解に納得できない場面があった。

 また、推理パートにおいては、少なくない証拠を見比べながら検討を行うことになるのだが、なかなかやりにくいUIである。検討のために証拠を画面上に表示している(Selected)状態と、矛盾する証拠だとして選択している状態(Pinned)に分かれるのだが、これの判別が視覚的に難しい。そして、Pinned状態で別の証拠を見ようとクリックすると、「ピン留めを外さないと移動できない」旨のメッセージが表示されるのである。この仕様によって、意図せずPinned状態になっており、証拠を移動しようとしたらできず、そもそもどこにピンを打っているかわからないので該当箇所を探し、ピン留めを外して別の証拠に移るといった動きが度々生じた。例えば押しピンのグラフィックをもう少し目立たせるとか、SelectedとPinnedの文字色を変える(Pinnedを目立たせる)とかして判別しやすいようにしてもらえると改善するのではないかと思った。

 最後に余談ながら、主人公とヒロイン(的存在)の恋愛要素は個人的には好みでなく、かつ当該感情の発露が半ば唐突であると感じた。どの時点からどのような理由でその感情に至ったのか、描写がないわけではないが、「そうだったの?」という感じで、言い換えると、主人公はヒロインを救うために行動していたのだろうか、との疑問があった。世界を救うことが彼女を救うことになるのか、それともその反対なのか、イコールなのかみたいな話ではあるのだが、本作の雰囲気からするとバディに留めたほうが物語としての納得感(?)が増すように感じた。しかしながら、ここは率直に言って好き嫌いの範疇であろう。