ポイントカードに取って代わり、ありとあらゆる小売店でスマホアプリが導入され、逆に今いるこの店のアプリをインストールしていたかどうかが分からなくなる。考えてみれば、それはポイントカードの時代と同じだが、一つ違うのは、アプリを通してよくクーポンが配信されるところである。店側がわざわざ安く変えるチケットを渡してくれるというのは全くもって「不思議」であるが、消費者としては使わない手はない。とはいえ、クーポンがあるから店に行こうとの行動原理にはならず、店に行ったときに初めてその存在に気づく方が多い。
店舗で日用品を買う時はだいたい何も考えていないので、機械的にかごに入れた商品を機械的にレジに差し出し機械的にスマホの決済画面を開く。ここまでの流れは文字通りオートメーションであり、あとはバーコード決済の画面を店員さんに見せるだけである。
ここで、店員さんから思いも寄らない言葉をかけられることが常である。「クーポン使えますけどどうされますか?」 クーポン? そんなものがあるのか。「アプリからご使用いただけますよ」 そういえばアプリなんてものを入れていたな。見てみると、店員さんの言うとおりクーポンが表示されている。ああ、ほんまですね。と笑いながら値引きを適用いただいて、ほくほくの笑顔でその場を後にするのである。
概してそのクーポンというのは、全商品に対してではなく、特定の商品についてのみ使用できるものである。ということは、店員さんは今現在どのようなクーポンが配信されているのかを理解していて、かつ眼の前の顧客が何の商品を購入したのかを認識したうえで、その2つが合致したがためにクーポン利用の提案に至っているものと思われる(POSで何かアラートが出るのかも)。
言い換えると、自分の働く組織がどのような販売施策を打っているのかを理解し、面倒がらずにわざわざ売値が安くなる提案をしているわけである。もちろん、店からすれば、顧客にアプリを使ってもらう方が嬉しいのだろうから、その意味では当然の行為ではあるのだろうし、何ならクレーム対策としての先回り行動なのかもしれないが、いずれにせよ、当たり前のこととしてその一連の動きができるということに毎度感心を覚えながら、ビオフェルミンを片手に帰宅するのだった。