死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

『深世海 Into the Depths』をクリアしての感想(中でも印象的だったこと、音と音楽について)

前段 

 Switch版の『深世海 Into the Depths(以下、「深世海」という。)』をクリアしました。ニンテンドーダイレクトで見て気になっていたところ、GWだし時間もあるしやるかと思って購入したものです。*1

www.youtube.com

 

 本作は深海を舞台にした2D「潜水探検アクション」で、いわゆるメトロイドヴァニアと呼ばれるジャンルに属します。アクションやストーリーの特徴については、いくつかのサイトが詳しく、そちらを見るのがよいと思われます。

(それぞれ一定程度のネタバレが含まれています)

 

tokyo.whatsin.jp

www.4gamer.net

 

 その上で、ここで何を書くのかといえば、主には本作における音と音楽についてです。刺さるものがあったのです。ゲームをしていて、これらでゾワッとなったのは久しぶりな気がします。その中でも特に印象的だった部分を言葉にしておこうと思いました。とはいえ私自身に音楽の知識は全くないので、総じて感覚的な表現になることを先にお詫びしておきます。

(以下には本作の若干のネタバレを含みます。)

 

深世海というゲームはそこそこしんどい(が面白い)

 深世海は「水中」が舞台であることから、その操作性は独特です。主人公は重々しく、何をするにも慣性が働き、なかなか思ったとおりには動いてくれません。気を抜くと地面に激突してダメージを食らい、放った銛が敵の間をすり抜けてしまうこともままあります(これは私が下手なだけですが)。

 ここに酸素や武器類のリソース管理が重なるので、もろもろ慣れるまでの序盤は結構しんどいです。しんどいのですが、それを面白いと感じるから不思議なものです。とはいえ、予想外に敵の攻撃を受け、唐突に少なくなった酸素量に顔を青くすることは珍しくありませんでした。

 また、水圧も緊張感を生む原因の一つです。主人公には耐えられる水圧(=水深)が設定されており、ゲーム上では横一直線の赤いラインで示されているのですが、このラインよりも下に体が入ると、みるみるうちに酸素ボンベと潜水服が破壊され、最終的に死を迎えます。ふと気を抜いた瞬間にラインを下回ってしまいそうになり、「危ない危ない!」と必死に体を持ち上げるのですが、そのせいで酸素量が減少し、何にしても命からがらの移動になる、ということがありました。

 というように慣れるまではしんどいのです。そして第1のエリアは「慣れる」ためのチュートリアルを兼ねており、何やかんやボスを倒す頃にはそこそこ伸び伸びと水中を動けるようになっていました。ともあれ、このようないくつかの制限下で何とか生き抜いたときの達成感や、酸素ポイントで「一息をつく」感覚がどうにも病みつきになります。

 

大海溝での一撃

 ということで、あちらこちらで溺れそうになりながらも1つ目のボスを倒したところ、その報酬として得られたものが潜水艦でした。早速乗り込んで道なりに進み、2つ目のエリアである「大海溝」に入ります。辺りがひらけた場所に出た瞬間、それまで静かに奏でられていたBGMが急に、しかし何も違和感なく切り替わり、女性の歌声と思われる音が私の耳に飛び込んできました。これが私にとっては大変衝撃的だったのです。

open.spotify.com

 

 厳密に言えば、女性なのか、あるいは人間の声なのかもわからないのですが、音源の正体は特に重要ではありません。「それまでの音楽から違和感なく切り替わり、ストレートに耳へ入ってきた」という一連の流れに驚き、その音は印象的なまま私の耳の中を泳いでいたのです。

 

 と、そうこうしているうちに音は薄れていき、BGMも、元の物静かな調子に戻っていきました。それと同時に、私はもう一つ別のことに気がつきました。辺りがあまりにも広いのです。先ほどのエリアでは、少し動けば壁にぶち当たり、あるいは細い洞窟のような空間をひたすら練り歩いて来たわけですが、今はどこまでいっても突き当たりが見えてこない。そしてこれは左右だけではなく、上下でも同じで、「大海溝」の名前の通り、どこまでも深い世界がそこには広がっていました。ここで私は「深海」を強く認識することとなりました。

 

 潜水服の状態とは異なり、潜水艦ではどこまでも深く潜ることができます。順序的に正解のルートかは分からないけれど、折角これを手に入れたのだから行けるところまでいってみよう、と進路を下に取りました。赤のラインを超えてなお進むと、徐々に上方からの光は届かなくなり、暗闇が視界を埋めていきます。2Dの描写でありながら、深海の暗さと静けさに怖くなってきたところで、またもや私の耳にあの声が入ってきました

 

「どうして!?」と私は驚きました。さっきまでは聞こえなかったのに。と、そこで私は、「深度によってBGMが滞りなく変化する」ことにようやく気がついたのでした*2。ここにきてやっとのことです。いわゆるインタラクティブミュージックというやつですね。「これはすごいな!」と興奮しているところで、敵の電撃を受け、潜水艦から放り出された挙げ句、死を迎えました。

 

深世海における「音」

 本作はこういったBGMに限らず、効果音についても耳心地がよく、酸素のコポコポ音や、先導(同行するお手伝いキャラ)のカチャカチャ音(声?)についつい耳を傾けてしまいます。そして、そういったものが水中の深いところで響いている感じがする。想像できるはずもないのですが、自分自身が深海にいるような気がしてきます。

 そうであるがゆえに、息苦しさもひとしおなのかもしれません。私が着けているのは2,000円もしない安イヤホンですが、それでも音(や音楽)を通して自分が水に包まれている感覚を覚えるのです。プレイし終えて、耳からイヤホンを外した時、まさしく潜水服から顔を出したように感じられる。だからか、決してクリアに時間がかかるゲームではない(8時間ほどでした)のですが、なかなか一度に長時間プレイすることはできませんでした。

 

面白かったです

 不自由ながらも楽しいアクション、音楽と音、そしてここでは取り上げませんが設定資料集が欲しくなるタイプのストーリー。プレイ後に余韻の残る、とてもよい作品でした。

 なお、素晴らしいことにサントラが各サブスクで配信されています。どこか引っかかるものがあれば、何かの機会に是非ともプレイしていただきたく思う次第です。

music.apple.com

open.spotify.com

 

 ところで本作をプレイして、カプコンさんにはやはり是非とも、ドラクォの系譜を継ぐ作品を生み出してほしいな、と改めて思いました。(どこか通ずるものがあるような気がする)

*1:Apple arcadeからの移植だそうですが、これまで全く知らなかった

*2:ついでに言えば水中かどうかでも変わる