死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

12月に読んだ本など

 本年もよろしくお願いいたします。

 

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

  • 作者:塙 宣之
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 新書
 

 原型となるWebの連載を読んでおり、とても面白かったので買った。

「関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」と称しているが、内容としてはこれまでのM-1の歴史を概観する感じのもの。何が評価されたのか、どうしてあのコンビは勝てなかったのか等、一関東漫才師目線から見た関西企業(よしもと)主催の漫才コンテストについての解説が続く。

 これを読んだのは今年のM-1が終わった後だったが、先に読んでいれば放送を数十倍に楽しめたのではないかと感じた。大会の性質や構造、あるいは審査員の視点が分かるためである。

 関西では日常会話がすでに漫才になっている、との評価は関西人として同意。程度はあれど、関東とは会話のリズムが違うんやろなとは思う。ただ、それをもってして、漫才において絶対的な差が生ずるとまで言えるのかは分からない。

 寄席でナイツの漫才を見たい。

 

自分探しと楽しさについて (集英社新書)

自分探しと楽しさについて (集英社新書)

  • 作者:森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/02/17
  • メディア: 新書
 

  森さんの著作については、S&Mシリーズ全巻、およびVシリーズ半分ぐらいまでを読んだことがあるものの、詩とか新書系は読んだことなかったなと思ってふらっと買った。

 何かと断言してくれる人がありがたく思われる現代だが、森さんのスタンスは「どちらでもよい」という感じ。故に、こんなタイトルだが自己啓発本っぽさはなく、何か答えを求めて読むものではない。文中にもあったが、本書はエッセィである。

「AでもいいしBでもいい」といった表現が複数回出てくる。「こうしなさい」とは言わない。よくよく考えてみると、見ず知らずの他人に対して言い切り調のアドバイスをすることがおかしいのかもしれない。

 肩の力を抜きたいときに読むとよい。

 

異世界誕生 2006 (講談社ラノベ文庫)

異世界誕生 2006 (講談社ラノベ文庫)

 
異世界誕生 2007 (講談社ラノベ文庫)

異世界誕生 2007 (講談社ラノベ文庫)

  • 作者:伊藤 ヒロ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 本筋とは違うところの炎上で知り、気になったので買った。

 なろう系へのアンチテーゼ、あるいはゼロ年代の振り返りみたいな内容なのかなと思っていたらそんなことはなかった。いずれも舞台は現実。

異世界」という言葉の持つ意味が変わってきたんだなあと感じた。固有名詞化していると言って正しいのかは分からないが、かぎかっこ異世界はそれだけで共通の世界観を生み出しますよね。

 と言いつつ、なろう系を読んだことがないのでよくは分かっていない。10年代のラノベを代表するのがなろう系(異世界もの?)という認識でいいのだろうか。時流を追いかけていなかったツケか、そこらへんの歴史がすっぽりと抜け落ちている。ここの文脈を知らないままに、次世代のコンテンツに触れることになるのだろうな。それとも、触れずに自分が離れていくのかもしれない。

 誇張されたキャラクター、要素で描く人間性、狂気の描き方。久々にラノベを読んで、久々に「あっラノベっぽい」と感じた。

 

声の網 (角川文庫)

声の網 (角川文庫)

 

 ショートショート以外の星新一を読もう、と思って大昔に積んでいた本。

 SFを読んで、「当時からここまで予想していたなんてすごい!!」などと言うのは軽薄に聞こえるのであまり使いたい表現ではないのだが、今回そう思いました。「情報銀行」の概念は昔からあったんだね(今のそれと異なるにしても)。

 個人情報を集積する世界の行き着くところは…という話。ディストピアハッピーエンド。本作では機械による作用が働くわけだけれども、その分まだマシと言えるかもしれない。一般的に合理的ではないと言われる人間が、過度に集積された個人情報の利用を図った場合どうなるのか、というのは既にもろもろ問題が認識されているところだが、最終的にはこの本の結末よりも悪い未来が待っているのではないか。

 

ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜 (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜 (角川ホラー文庫)

 

  既刊16巻のシリーズ作品で、5巻まで読み以降を積んでいたところ、最新刊まで一気読みした。内容を全く無視した上で言うと、読後感は海外ドラマのCSIシリーズを見たときに近い。今回通しで読んで、改めて好きな作品として認識できたので、1記事使って書いてみたい。もとい書きます。

 

 それでは1月も張り切って参りましょう。