死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

吉岡茉祐さんバースデーイベント『Thank You For Coming! 2019』に行ってきました(あるいは、サンリオピューロランド紀行)

 朝起きると、ふくらはぎが筋肉痛だった。パンパンに張っている。リングフィットアドベンチャーのせいかと思ったが、膝から下を鍛えた覚えはない。変な体勢で寝てしまったのだろうか。寝ぼけた頭で考えていたところ、何も謎ではないことに気がついた。原因は吉岡茉祐さんだ。彼女の歌に足でリズムを取ったからだった。言い換えると、久々にライブを楽しんだからだった。

 というわけで、11月17日(日)にサンリオピューロランド・エンターテインメントホールで開催された、吉岡茉祐さんバースデーイベント『Thank You For Coming! 2019』昼・夜の部に参加してきた。単推し者の方に失礼かと思い、当初行くつもりはなかったのだが、ひょんなことからワグナーよりお誘いを受け、何かのご縁と思い赴くことにした。以下は例によって当日の感想という名のポエムであり、初めてピューロランドに入ったアラサー男・興奮の記録である。(7000字程度)

多摩センターへ

 新横浜からJRに乗り換え、多摩方面へと向かう。京王線からはサンリオグッズを身に着けた子どもの姿が増えていった。こういうところは舞浜と変わらないなと感じる。ただし、年齢層は低めである。「あの子のカバン、シナモンだ」とひそひそ声で親に伝える女の子の姿が微笑ましかった。

 多摩センター駅を降りると、早速にサンリオキャラクタたちが出迎えてくれる。とはいえ、ここはピューロランドのためだけにある駅ではない。エンタメが普通の都市機能と混ざり合っている感じがよかった。

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(役所的フレーズとキティ氏のコラボ……いいですね)

 

ピューロランド入場

 グーグルマップに従った結果、通常のコースから外れたところを歩いたようで、ピューローランドを下から見上げる結果となった。ディズニーランドやUSJと異なり、ピューロランドは住宅地近くにドドンと座しており、そびえ立つ送電鉄塔も相まって、非常に異世界感を覚えさせる風貌だった。ある意味、ファンタジーっぽさが強い。ランド全体が我々の世界に転移してきた感じである。

 ただ、外観がどうであるかは本質ではなかった。入場すると分かるのだが、ピューロランドの世界はランド内で完結しているのだ。どこにも窓の類はなく*1、外の様子を窺うことはできない。ピューロランドは徹頭徹尾ピューロランドなのである。そこはファンタジーでファンシーな雰囲気に包まれている。

 エントランス近くでグリーティング中のキャラクタを一瞥した後、ひとまずショップへと向かった私は、あらゆる方向性の「かわいい」が集まった空間に面食らい、早速感動していた。商品開発力の凄さよ。そして過去からのキャラクタが今も現役である。人気の多寡があるのは仕方がないにしても、誰もが誰かの推しなのだ。

 

 グッズの一つとして、「ミラクル♡ライト」が販売されていた。これはピューロランド公式のペンライトである。赤橙黄緑青藍紫の7色+ピンクに対応。ぼやっとした光の感じ。これはもはや草ブレードの上位互換では……後は白があればというところ。

 いわゆる遠隔制御ができるタイプで、パレードでも使われるそうだ。すごいのは、パレードを収録したBDの視聴時にも、生のパレードと同じようにライトの色が変わるらしいところ。何だその技術。解析班によれば、可聴域外の音声を用いているとかなんとか。1500円に高技術が詰め込まれている。

titn-nanana.hatenablog.com

 

 ショップを楽しんだ後、本日の会場へ向かう。下りのエスカレーターに乗っていくと、お次は巨大な樹を中心とする開けた空間が現れた。感じたのは秘密基地らしさ。コンパクトではあるが、そうであるがゆえにワクワクが引き立てられる。そもそも、コンパクトに見えるのは私が大人だからであって、子どもの目線からは壮大な景色に見えるだろう。

 好奇心は尽きないものの、散策もそこそこに本日の会場であるエンターテイメントホールへと向かった。ゲートにKADOKAWAのスポンサー表示があり、ここでようやくその関係性を理解した。

 

ところでサンリオといえば

 このイメージである世代(学校行く前に見て見終わらないままに家を出るパターン)

www.youtube.com

(今聞いたらめっちゃキティ賛美やな)

 

本イベントの趣旨

 吉岡茉祐のいままでとこれからについて。司会は田中美海さん。ゲストに藤田茜さんが登壇。

 

開演・昼の部

トークパート(人の歴史とは)

 昼の部は吉岡さんのこれまでの人生、もとい芸歴について振り返るものであった。個人的な経歴に係る部分の言及は避けるが、幼少期から芸事に触れてきたのがよく分かる。劇団に所属することとなった経緯、子役としての実績、途中で司会・田中さんの涙も挟みつつ、吉岡さんの積み上げてきたものを観客席から覗かせていただいた。おみやさんと科捜研の女の過去作配信は……難しそうですね。(DVDもない)

 印象的だったのは、ジュニアアイドル(と自称する)時代の話。某DVD(と、隠す話でもないのだろうが*2)の発売イベントにおいて、演者4人に対し客が一人だけだったそうだ。いわゆる握手会やリリイベにファンが大挙となって押し寄せる光景が、はるか遠くの世界にあるものだと認識し、応援してくれる人々がいる大切さを実感したのだという。

 その意味で、吉岡さんは幼少期の頃から、客席が埋まらない怖さを知っている。そう考えると、SSAでのライブ決定を明らかにした時に、「正直怖い」とこぼした言葉の重みもまた変わってくるように思われた。

  

 ところで、吉岡さんが出演していたという小僧寿しのCMについては、サンリオとのコラボだったとのことだが、いくら思い出そうとしても私の頭にはドラえもんの姿しか現れなかった。(実家のVHSを漁ればヒットするかもしれないが…) 

  当イベントの制作会社が『らき☆すた≒おん☆すて』と同じという話も。何がどこで繋がるか、ご縁は大切にしないといけませんね…。

○幕間

 田中さんと藤田さんによる物販紹介コーナー。Tシャツ・タオル未着用者がいじられるのは見慣れた光景である。

 当該イベントにおいては、単品で全てを揃えた場合と同額で、全グッズのセットが販売されていた。ただ、これを購入すると特典に(販売されているものとは別の)ブロマイドが付いてくる。言い換えると、特典ブロマイドはセットを買わなければ手に入らない。という前提のもと、登壇している二人はセットを称して「お得です!!!」と煽るのだが、これはセットを買えば(全グッズを単品で購入した場合と比較して)追加の料金を要せず特典ブロマイドを手に入れられることがお得と言っているのか、まとめ買いしても安くならないことについてのギャグなのか、私はよく分からぬままに笑っていた。

 

○ライブパート

 パンチ☆マインド☆ハッピネスの時間だ!!

 事実として吉岡さんの姿を見るのは久しぶりだったが、歌って踊る吉岡さんの姿を見るのは一層に久しぶりに感じた。吉岡さんの動きは、軽やかだけれども重たく感じる。これは、キレがないとかノッソリしているという意味ではなく、一挙手一投足が強いのだ。周囲を敵*3に囲まれていて、それらを一網打尽にしていくような感覚である。

 WUGちゃんのライブを最前で見た時に、この人たちは戦っていると感じたのだが、吉岡さん一人だと、それが比喩ではなくなる。吉岡さんは笑いながら、自分を取り囲む輩を打ちのめしていく。その姿がとても強く格好良く見えた。あとめっちゃマイク回す(それはドラムスティックではないですよ)。

 

○サプライズ with キキララ

 昼の部も終わりか…というところで舞台袖から現れたのはキキララである。キキララである。キキララだあ!!!!!!! 田中さんと藤田さんが用意したプレゼントを、キキララの二人が持ってきたのだった。

 すだちくんのときもそうだったが、キャラクタが出てきてしまえばそちらに目を向けざるを得ない。私(と恐らく多くのオタク)の視線は、キキララの二人に奪われてしまった。かわいいね ああかわいいね かわいいね。唐突に川柳も読んでしまうほどだ。ちょこちょこ動く二人を見ていると幸せになった。

 時に、キキくんは想像以上にわんぱくボーイだった。プレゼントを見ては、自分の分はないのかと言うがごとく、人差し指を唇に当ててアピールするし、演者の言い間違いにお腹を抱えて笑ったりする。とにかく目立つし、ぐいぐい来るのだ。しかし、そんなキキをララが諌める。さすがお姉さんである。

 後から調べてみると、キキくんは「好奇心旺盛で、ちょっぴりあわてんぼうのいたずら好き。」とのことだった。なるほどね。

 

○お見送り会

 いつだって 元気に言おう ありがとう 1.5秒に こめる感情

 

パレードを見て泣く男

 吉岡さんに見送られてホールの外に出ると、何やら来たときと辺りの雰囲気が違っていた。パレードが始まっている!

 ピューロランドに来たのにもかからず、かのキャラクタたちの姿を見ずに帰るのはあまりにも勿体ない。早足で群衆の隙間を探し、少し遠くからではあるけれども、ついに彼ら彼女らを目に捉えられた。キティがプリンがキキララが、車に乗って樹の周りを回っていた。終わりも終わりのタイミングだったが、祝祭感漂う空間の一員になれた。

 誰かが誰かに夢や希望を与えている様子を見ると、どうしても涙腺が刺激されてしまう。楽しそうに笑う子どもたちの顔を見て、なんとも素晴らしい空間であるなと思った。そしてパレード終了ともにアナウンスが流れる。「パレードの模様を収録したDVDはショップでお買い求めいただけます」 うーん商売上手。

 

オタク、メモリーボーイズに出会う。

 折角なので夜の部までの時間をピューロランドを楽しむことにした。気になっていたKAWAII KABUKIは残念ながら満席。パンフレットを見直したところ、何やら格好良い男子のイラストに目を引かれ、私たちはフェアリーランドシアターへと向かった。

 会場に入り、思っていた以上に広い空間に驚きつつ客席に座る。マイメロちゃんの語りで物語が始まった。

 

 『MEMORY BOYS~想い出を売る店~』は、過去にサンリオから出版された『想い出を売る店』を原作とするミュージカル作品である。『想い出を売る店』自体は1985年に映画化もされたらしい。(ただし、このミュージカル版との共通点はほとんどなさそう)

 ストーリー自体は王道と言ってよいだろう。大どんでん返しはない。キャラクタも属性付けがはっきりしていて分かりやすい。しかし、そうであるがゆえに、心へまっすぐ響くものがある。

 主人公の三人は想い出を売っている(対価を得ているかは明らかでない)。想い出の宿った品物をスチームパンクな機械に通すと、赤い瓶が排出される。瓶にはシャボン玉の原液が入っていて、それを吹くと、空に舞うシャボン玉に、当時の想い出が映し出される。

 ただ、想い出が全て良いものとは限らない。当然ながら、人によっては思い出したくないことだってある。だとすれば、「想い出を売る」行為にはどれほどの意味があるのか。作中において三人は、「しなくてもよいことをしているのではないか」としばし葛藤する。

 そうこうして、本編のキーキャラクタは自身の過去を乗り越えていく。そして話の締めでマイメロちゃんは言うのである。「今を楽しく生きて。それがきっと、後で良い思い出になるから」 (若干うろ覚えだが)ええ話や…まあ泣きますよね。いい作品でした。サントラ売ってないんですか? 

 

 加えて言えば、舞台の構造と演出もよかった*4。このミュージカルには、ステージと客席の垣根がない。世界が地続きなのである。演者は通路を走るし、我々が登場人物の一人になったりもする。全てが全てではないが、双方向になる部分があるのだ。その意味で、観客もまた本作を作る一要素となっている。それがとても楽しい。特に子どもさんにはいい経験というか、想い出になるのではないかと思った。

 

 何でもかんでも紐付けるのは悪い癖だが、「想い出」表記に、垣根のない演出、さらには挫折や苦難からの再起。色々と思い出すことがあった。もちろん私にとっては良い想い出である。彼女たちも同じなのであれば、それに越したことはない。

 

ピューロクリスマス

 余韻に浸りながらメモリーボーイズに別れを告げる。シアターから出ると、ランド内は既にパレード待ちの雰囲気。会場近くまで移動し、その始まりを待った。

 キリのいいところで切り上げようと見始めたものの、キャラクタたちのキレッキレのダンスから目を離せずキリがない。後ろ髪を引かれながら、強い意志をもって再度エンターテイメントホールへと向かった。

 

夜の部

トークパート(激論・吉岡茉祐夜までそれ正解*5

 ディベート形式で始まったかと思いきや、最終的には田中さんと藤田さんによるプレゼンバトルになっていた。

 慧眼だなと思ったのは、議題『吉岡茉祐はかっこいい or かわいい』における藤田茜さんの意見である。「人前(ファンの前)に立つときの吉岡さんはかっこいい。しかしそれは、「人前に立つ」にあたり、それ用の意識を持つからではないか。だからあくまでも、吉岡さんの本質はかわいいなのではないか」

 これは私が初めて吉岡さんを見た時の印象と等しい。舞台上の吉岡さんはいつも、どこか演技がかっている。端的には、根が役者だからということなのかもしれない。求められている吉岡茉祐像を演じているように感じられるのである*6

 ヨナヨナ等で見た時と印象が異なるのはそれが原因なのではと思う。つまり、仕事であるかどうかではなく、自分を見に来ている人がいるかどうかの尺度である。「自分はファンから『かっこいい』を求められている」から、そうあろうとしているのではないか。

 ではファンが「かわいい」を求め続ければ、吉岡さんは応えてくれるのだろうか。プロである彼女は、不承不承ながら応じそうである。というか、既にこの日一日そうだったかもしれない。

 田中さんが言われたように、「しぶしぶさ」は重要な要素だ。かわいいを100%受容せず、しかし100%のかわいさを追求してみていただきたい。なお、私はかっこいい派です。

 

○朗読劇

 脚本家・吉岡茉祐氏によるショートコメディ。

・暗転でテンポを生み出すのも一つの技法なんだな

・大きく言えばマイク一本で世界観を生み出す点に落語との類似点を感じて好き

・唐突なメタ発言はご愛嬌

・ガラの悪い田中さんやっぱりいいですね

・純粋に藤田さんの声いいですね

 

○幕間

 昼と違って私の手にはTシャツとタオルがあった。

 

○ライブパート

 「明日のことは考えず!」 その言葉が聞きたかった。記憶が混濁していて、「灰になる準備は~」と言ってくれたかどうかは定かじゃないが、ともあれ吉岡さんの煽りを聞けて幸せである。

 サクラ大戦、温泉むすめ、コップクラフト。これから積み上げていくものが何であるのかを、私たちに示してくれたのだと思っている。そして締めの『God Knows...』。改めて聞いていると、『Beyond the Bottom』の世界観と重ねてしまうのは我ながら謎。*7

 

○サプライズ with キキララ

 また来たぜ奴らが(歓喜)。キキララの二人によって、大きなバースデーケーキが運ばれてきました。

 わんぱくボーイ・キキくんは昼の部よりもギアを上げ絶好調。ケーキに顔を突っ込もうとしたり、演者の腕や手を積極的に握ったりと比較的やりたい放題でしたが、しっかりとララちゃんが窘めてくれました。

 面白いことに、途中からキキララの眉毛が見えてくるんですよね。一言も発しないのだけれども、身振りと手振りで表情が生まれている。これこそがノンバーバルコミュニケーション。プロの技に感動していました。

 

 ラジオの相方である鷲崎健さん、飯坂温泉の皆さんからのお祝いメッセージも。後者については、力強い足踏みでカメラが揺れたところが好き。

○お見送り会

 お別れも 元気に言おう ありがとう

 

退場

 イベント終了時には、既にランドの閉園時間を過ぎており、図らずも無人の遊園地を歩く夢を叶えてしまった。

  ゲートを潜る際には、お姉さんがクロミちゃんのパペットと共に見送ってくれた。全く最後まで笑顔にさせてくれる場だった。

 

吉岡茉祐の描く未来

 労働に勤しんでいると、何かの折に「5年後・10年後のキャリアプランを教えて下さい」と聞かれることがあります。その度に私は、「そんなもんその時にならな分からんやろ」と思いながら、何となしの方向性を考えて取り繕うわけです。

 しかしながら、吉岡さんは違います。いつも目標を持って、あるべき姿を描き、そこに到達するまでの道筋を考えておられるように思います。もちろん、計画通りに行かないこともあるでしょう。とはいえ、だから駄目とはなりません。進むことが大切なのです。

 この日だけでも、ファン(の気持ちを代弁する田中・藤田両氏)からの期待が、いくつも吉岡さんに伝えられました。一人芝居・ファッションブランド展開・楽器演奏・ソロデビュー……きっとこれらもまたその一部でしかありません。こういうことをやってほしい、ああいうことをやってほしい。色々なフィールドで能力を発揮する吉岡さんを見たい。そしてそれらを実現する吉岡さん自身を見て、また私は勇気づけられるのだと思います。

 

 改めましてお誕生日まことにおめでとうございました。この一年が吉岡さんにとって幸と実りの多い日々となりますよう。広い意味での同郷人として、今後とも心より応援しております。

*1:上階には行っていないので確言はできないが

*2:なぜかニコニコ大百科に項目もある

*3:もちろんここで言う敵は概念上のもので、具体的な何かを想定しているものではない

*4:SS_Pのフレームメイド演出を思い出す部分があり、演劇ってそういうものなんだなあと感心した。

*5:と聞いてリンカーンとIT革命、どちらを思い浮かべる人が多いだろう(他にもあるのか)

*6:個人的にこの点は田中さんも同じ。ただ、例えば山下七海さんが「求められている姿を演じている」点を表面上隠さないように表現するのに対して、二人は真逆を行くように感じられる。

*7:言い換えると、BtBを歌っている時の吉岡さんの姿が少し重なったということ。