PiTaPaが好きだ。PiTaPaというのは、近畿圏以外在住の方には馴染みが薄いと思うが、いわゆる交通系ICカードの一つである。ポストペイ形式であるのが特徴で、要は電車に乗れるクレジットカードと言える*1。チャージ額の心配をする必要がなくて良い。一般的なオートチャージ機能が、特定のクレジットカードと紐付けなければならなかったり、駅の改札を通らなければチャージされなかったりする一方、PiTaPaにはそんな煩雑さがない。ただタッチするだけでよい。なんて便利なんだ。
このように便利なPiTaPaだが、近畿圏から出てしまうと普通のプリペイドICカードと化してしまう。そもそも、PiTaPa以外でポストペイ形式を採用しているカードはない(はず)。会社側からすれば、利用客にわざわざ信用払いさせるリスクを背負うよりも、先に入金させておく方がいいだろうから、仕方のない話だとは思う。管理も面倒だろうしね。ただ、それはあくまでも会社側の事情であって、一消費者としては「むむむ」と思ってしまう。ポストペイで使わせてよ。
仕事の都合で名古屋行きが決まった時、だから私は残念に思った。「チャージ額に怯える毎日が始まるのか…」という心境である。大げさかもしれないが、管理タスクが一つ増えるのが嫌だった。とはいえ、先に多額をチャージするのも気が引ける。ああポストペイ。
そんな不安な私を暖かく迎えてくれたのはアイツだった。
manacaである。
manacaというのは株式会社名古屋交通開発機構が発行する交通系ICカードである。が、そんなことはどうでもいい。私が伝えたいのは、この黄色い物体のことだ。
言うまでもなく、この子はmanacaのマスコットキャラクターである。名前はない。今のところ「manacaのマスコットキャラクター」(あるいはイメージキャラクター)が正式名称である。この点、名古屋市交通局も断言している。
出典:名古屋市交通局
あっさりしてるな。
というわけで、ここではこの黄色い物体を「マナカ」と呼ぶ。というか、これでええやん。マナカちゃん。manacaのマスコットキャラクター、マナカ。混同するからあかんか。
ともあれ、マナカはかわいい。まずフォルムが丸い。
ただの黄色いカービィじゃねえか。確かにそうかもしれない。ただ、そうであれば、カービィがかわいい以上、マナカがかわいいのもまた必然である。そして大事なのは、丸の外縁が何かモシャモシャしていることである。これはつまり、マナカが物体として柔らかいことを示している。丸くて柔らかい。そんなもん、かわいいに決まっているじゃないか。
手に持っているmanacaと比較すると、身体のサイズはそんなに大きくない。FelicaのICカードが横85.6mmであることからすれば、マナカの全長は大体35cmぐらいだろう。なるほど、思ったより小さい。丸くて柔らかいなら、全身で抱きしめられるぐらいの大きさであってほしい気もする。トトロ的に。しかし、自分の膝高よりも小さい、丸くて柔らかい物体が、ポテポテ歩いているところを想像すると、これもありだなと思う。でもこの高さだと、改札にカードをタッチできない気もする。あと改札につっかえてしまうかもしれない。横幅的に。そこは柔らかいから大丈夫なのか。ぎゅむーと形状を変えながら改札を通っていく。そんな姿もまたかわいいはずだ。
マナカは表情も動きも豊かである。朗らかに笑ったり、
寝たりお辞儀したりする。
人間もそうだが、感情表現が豊かな存在はそれだけで魅力的だ。見ているだけで幸せになれる。そこに居てくれるだけでいい。それは究極的な才能である。マナカもそんな奴である。
名古屋の地下鉄に乗ると、ふとした瞬間にマナカと出会うことができる。しかし、足りない。もう少し活躍の場を広げてもいいのではないかと思う。だってこんなにかわいいんだもの。丸いし。ジャムムと同じぐらいポテンシャルあるよ。多くの利用客もそれを求めているはずだ。少なくとも私は、毎日改札をくぐるときに、券面のマナカを見てほっこりする。重い身体を起こして会社に向かう朝、疲れた身体を引きずって帰る夜。マナカはいつも、こちらを見て柔らかく笑っている。そうしてふっと緊張が解ける。だから、マナカは多くの労働者を救うことができる、と私は思っている。丸いしね。今こそ、名古屋中をマナカで埋め尽くす時だ。