いや、拙者のレベルでオタクなんて自称するのは本物に失礼だし憚られるでござる……という気持ちは置いておくとして、古くからのオタク友達と酒を飲んでいると、そんな話になることがよくある。要はおっさんになりつつある*1男たちの昔話大会だ。ここでは、「オタク」の定義も曖昧なもので、はっきり言ってしまえば、そういう作品もあったね、と単に過去を酒の肴にしたいだけである。
大体の場合において、話はコロコロコミックから始まる。「『K-1ダイナマイト』はどう終わったんやったっけ」とか、「ヨーヨーでサイボーグ化してたよな」とか、そんな漠然とした内容。あるいはおジャ魔女なり、初期プリキュアなり。何にしても、話の対象が違うだけで、おっさんには違いないなと思いながら酒は進む。
そうこうしている内に、話は深夜アニメへと移っていく。初めて見た深夜アニメってなんだっけ。パッと浮かぶ作品がある。『地獄少女』『灼眼のシャナ』『D.C.S.S.』『Canvas2』の4つだ。MBSとサンテレビ(あと京都テレビ)様様である。今は亡きVHSに録画をして、放送日の翌日に見ていた。ただ、物語についての記憶は曖昧で、Wikipediaを見なければ筋書きを思い出すこともできない。
それらと出会ったのは、全くの偶然だったと思う。たしか、学校の試験勉強をしていた時だ。最後の追い込み、あるいは悪あがきのために、夜が更けても机に向かっていて、休憩がてらテレビの電源を入れた。何を見ようというわけでもなく、ザッピングしていたところで、アニメの絵柄が目についた。
一度存在を知れば、他にどのような作品があるのかが気になってくる。そうして、自分の知らない世界というか、ジャンルというか、そういうものがあることを知っていく。
ライトノベルの存在を意識したのも、多分その過程だったと思う。それ以前から電撃文庫は知っていた。『キノの旅』に『ダーク・バイオレッツ』。ただ、色々なレーベルが、ラノベという一ジャンルを形成していることは知らなかったし、電撃に触れたきっかけも全く思い出せない。青い鳥文庫の延長線上にあったのかなという気もするが、定かではない。
ネットにも浸かり始めていたところで、アニメ化の発表とどちらが先だったか、『涼宮ハルヒの憂鬱』がとにかく面白いと聞いた。読んでみた。確かに面白かった。これもまた、深夜アニメと同じで、自分が見たことのない世界。キャラクタも、文体も、ありとあらゆる要素が初めて触れるものだった。
そんな作品がアニメになるのだから、見ない選択肢はなく、初っ端の『朝比奈ミクルの冒険で驚かされ』、バラバラの放送順に興奮し、しかしだからこそ、毎週の放送が楽しみで仕方なかった。ここまでひたすらに次週が待ち遠しい感覚があったのは、後にも先にもハルヒだけだと思う。
アニメだけでなく、全編の振りが明らかでないのに山程アップされるダンス動画を見て、よう分からんけど盛り上がってんなと感じていた。内輪ノリの拡大であったとしても、アニメの影響が現実世界にまでリアルタイムに及んでいる感覚に興奮していた。「ハルヒ」というコンテンツを使ってどうやって遊ぶか、みたいな大喜利的な側面もあったのかな。そういえばゾンビーズは元気にされているのだろうか。
それで言えば、God knowsからいわゆる演奏動画を知ったんだったか。というより、そこらへんから「弾いてみた」も盛り上がっていったのか。KURIKINTON FOX氏は元気にされているのだろうか。そうこうしている内に初音ミクが出てきて…何というか楽しい時代だったなと、やはりおっさん化を否定できない。
ともあれ、そういう流れの中で、自分がインターネットに触れる時間も加速度的に増えた。今の自分を構成する大きな要素がその時に育まれたのであって、だからハルヒがなければ、もう少し違う人間になっていたかもしれない。そう言えるぐらいの存在なんだよなと、テレビで流れる京アニの紹介を聞きながら、そんなことを考えていた。
*1:まだなったとは言わない