死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

『MACROSS CROSSOVER LIVE 2019』に行ってきました(あるいは、「長く愛されるコンテンツ」の魅力とは。)

 約一年ぶりに幕張へと行ってきました。目的は『MACROSS CROSSOVER LIVE 2019』。マクロスについては、フロンティアは何とか分かる程度の知識しかなく、そんな奴がこのようなオールスターライブに伺っていいものか迷いつつも、やはりこういうものは行けるなら行っておくべき。というわけで、飯島真理さんに始まって、福山芳樹さんとチエ・カジウラさん率いるFIRE BOMBER、我々の盟友であるワグナー中林芽依ことMay'nさんに中島愛さん、そしてワルキューレ錚々たる皆さんで織りなすパフォーマンスを楽しむべく、6/2(日)公演に参加してきました。本記事は、主として自分の記憶に基づく、マクロスの知識がない人間の不正確な感想となります。よろしくお願いいたします。(6000字程度) 

 

aniuta.co.jp

幕張へ行く

 久しぶりの幕張は曇り空でした。たしか去年にWUGのグリフェスで来たときには、同日程でバンドリのライブがあり、さらにはマリンスタジアムパリピさん向けのEDMイベントもあり、そこにアウトレット目的のファミリー層が加わって、なかなかに周辺の顔ぶれがカオスだったのですが、この日も幕張イベントホールで『LOVE MUSIC FESTIVAL 2019』なるイベントが開催されており、同場所に異なるバックグラウンドを持つ人間が集まる様子を見ることができました。

 

会場へ向かう

 ライブ会場へ向かうと、通り道のJOYSOUNDブースから野太い声が。数十人がブース前に固まって叫んでいる! 何かと思えば『DYNAMITE EXPLOSION』の合唱。福山さんのシャウトを再現せんと声を上げる皆さん。熱い。熱くて熱い。結構録画している方が多かったので、どこかには上がっている?

 展示場を二ブース打ち抜いたライブ会場は流石の広さ。観客数は14000人程度だったそうで、多人数が一箇所に集まっている状況は、それだけで気持ちを昂ぶらせます。

 座席はセンターステージより後ろの上手側。メインステージの視認は無理そうだと思いつつ、久しぶりの「ライブ前の緊張感」に胸を踊らせながら、開演の時間を待ちました。そうそう、ライブってこういうものだった。

 この時、後ろのお兄さん方が「昨日は21:10ぐらいに終わった」と話すのが聞こえ、「17:00スタートやから長くても20:00終わりぐらいやろ」と何も調べず高をくくっていた私は内心びっくり。どうやっても終電には間に合わない。急いで近隣のホテルを予約して事なきを得たものの、そろそろ計画性のあるオタクにならなければならないと、固く決意したのでした(3ヶ月ぶり7回目)。

 

開演

 本公演では、これまでのマクロスのシリーズ順に出演者が登場。超時空要塞マクロスから始まり、途中サプライズも挟みつつ、それぞれのパートを40分程度の持ち時間で展開。各パートの始まりには、その作品の導入映像(第1話?)が流され、作中における時の移ろいを説明してくれるため、それだけ現実でもコンテンツが続いているのだということを、強く印象付けられました。

 

FIRE BOMBER

 バッキバキにギターをかき鳴らしながら、センターステージへとせり上がってくる福山さん。直前まで飯島さんが展開していた世界観とは全く別の空間に、一瞬で私を引き込みます。この先に備えて、心なしか冷房の効きも良くなったよう。しかし、恐縮ながらそんな心遣いはほぼ無意味。音を聴くだけで心拍数が上がり、おでこに汗が流れ始めます。

 まずもって何が格好いいかといえば、スタンドマイクの方向を口で押して変える姿。『突撃ラブハート』を歌う間、90度ずつその立ち方向を変えて私たちに歌を届けてくれるのですが、歌いながらぐぐぐいっと口でスタンドを回すのです。生まれたこのかた、いわゆる「ミュージシャン」のライブに行ったことはなかったんですけれども、初めて目にする(当然ながら)アイドルとは違う佇まいに、自然と「すげえ」の声が出ていました。

 と、のっけからテンションマックスであるものの、福山さん(バサラと言うべきか)の魅力は熱さだけではありません。『真赤な誓い』とJAM Projectの有名曲での福山さんしか知らない私にとって、『REMEMBER 16』や『ANGEL VOICE』の優しく透き通った歌声は新鮮で心地よく、穏やかな空気に体が包まれました。

 チエさんの曲は音響をフルに活かし、四方八方から音が飛んできました。曲調は穏やかなのですが、聴いてる間は全く緊張が解けませんでした。気を抜くと、歌が伝えようとしていることを聴き落としてしまうような気がするのです。取りこぼしてはいけない、という気持ちが非常に強く、それ故に『Pillow Dream』が終わったときには、勝手ながら達成感めいたものを覚えていました。

 締めの『PLANET DANCE』では、福山さんがラストのギターソロでストラップを外したと思いきや、歯ギターの後、空高くギターを投げてナイスキャッチ。サービス精神旺盛すぎる。そして格好いい*1。格好いいしか言っていませんが、それぐらい端的な表現が相応しい。本物のミュージシャン(ロッカー?)を見れました。

 この後、ライブ後半に向けて20分の休憩時間が挟まれたのですが、その間「なつかCM」と称して、歴代のTVCMがステージ上のスクリーンで映されていたところ、マクロス7の各CDのCMで流れてくる歌声が、直前に聴いていたそれと変わらず、笑ってしまいました。

 

フロンティア

 観客層のボリュームゾーン(私もそうですが)はここであったのか、フロンティアの映像が流れ始めると観客席から大きな歓声。そして始まる『Welcome To My FanClub's Night!』 伸びて伸びるMay'nさんの歌声。他の方についても総じてそうだったのですが、一曲で、一声で観客を全く別の世界観へと引き込むわけで、そうできるのが本物たり得る条件の一つなのかなと思いました。次の『射手座☆午後九時Don't be late』を待たずして、もうそこはフロンティアの世界になっていました。

 そして中島さんの『星間飛行』です。あれだけニコ動でこの曲に触れた世代であるにもかかわらず、今日に至るまで生で聴いたことがなかったという体たらく。今となっては可愛さだけでなく、しっかりとした芯の強さも感じられるこの曲で、会場一体となってキラッとするのは最高に楽しい! 往年の海外大物アーティストの来日公演を楽しむ中高年の気持ちが少し分かりました。

 

10年越しの不安

 MCにおいてMay'nさんは、「シェリルの歌声(のみ)を担当する」役目の特質上、いつも「自分がシェリルとしてステージに立てているか、みんながそう認識してくれているか」が不安だったと語られました。この点については、福山さんが「『俺の歌を聴け』と言うのは実は憚られる。自分一人で歌っているわけではないから」と語っていたことと似た話のように思います。こちらから見れば、何の違和感もないわけですが、歌っている本人からすれば、「歌声だけを担当する」点に難しい部分もあるということでしょう。

 そんな悩みを、今回のライブの準備に合わせて初めて共有された中島さんは、「隣に居るのがシェリルじゃないと思わなかったことなんてない」と答えたと。その件で私はもう泣いていたのですが、「この作品を通して、これまでにも、そして今後一生かかっても出会うことはないだろうほどに共鳴できる相手と会うことができた」との中島さんの言葉によって本格的に涙腺が決壊しました。

 また、そうやって語っているときの中島さんがとても頼もしいんですね。休業時のエピソードを聞くに、ここまでに山なり谷なりを乗り越えてきたこともあるのでしょう。格好いい目の衣装に身を包みながら若干泣きそうになっている(ように見える)May'nさんとの対比で、余計にそう見えた部分もあります*2。流れに乗じて「フロンティアの単独ライブがやりたい」とまで言ってのけてしまう姿は、怖いものなしというか、実現するんだろうなと思わせる凄みがありました。

 こういった言葉を頭に置きながら、『What 'bout my star? @Formo』の時だったでしょうか、ステージの対極に立つ二人が花道上で出会った光景を思い返すと言葉が出ない。やっぱり「かけがえのない戦友」感に私は耐えることができません。泣く。

 「今日のライブが今できることの集大成」と総括しつつ、また大きくなった姿を見せられるように個々の音楽活動を頑張っていくという宣言も力強い。この人たちは絶対に帰ってきてくれるという安心感を覚えました。泣く。

 

WUGとの共鳴

 MCでの言葉を聴いて、May'nさん*3とWUGが噛み合った理由を何となく理解した気になっています。自身の中に持っている物語の性質が似ているからだろうと思うのです。一つの作品との出会いが、その後の人生を大きく変えた。その作品を通じて、様々な世界と人に出会った。May'nさんはマクロスでデビューしたわけではないので、完全に境遇が一致するわけではないにしても、その時々の偶然と運命に感謝し、その一つ一つを絶対に無駄にしない姿勢が、二つの存在をリンクさせているように思いました。

 

ワルキューレ

 「Welcome to Walküre World」の声が聞こえたら、そこはもうワルキューレの世界。今更ながら、その時代時代に合わせた曲作りをされているんですね。そして、それが作品の世界観自体を作り上げてもいる。

 面白かったのは、ステージ上へ投げられる声援が、それまで「バサラー!」や「ランカちゃーん!!」というようにキャラ名であったのに対し、ワルキューレでは「のぞみるー!!!」と声優さんの名前だったこと。時代でしょうか。

 

絶対零度θノヴァティック

 これが聴ければワルキューレパートの目的の一つは達成、と考えていたところ、早々にその機会が得られました。ドラムすげえ! 一曲通してメインステージでの演目だったため、ダンスはよく見られず。しかし、生で聴く五人の掛け合いは気持ち良い! そもそもよく歌えるなあと感動。それを言い出すとマクロスの曲全般がそうなのですが。

 

破滅の純情

 JUNNAさんの声が重くキレイに伸びる。「純情」を繰り返すところは、歌声に合わせて手を下からぐーっと上げてしまいます。とにかく体に響くんだ。コーラスもあわせて、ずっとお腹を殴られている感覚。もちろん悪い意味ではありません。

 

ワルキューレは裏切らない

 JUNNAさんの一声目、あれはどうなっているんしょうか? 「いつかー」でこっちは「ウワァァァァァ!」ですよ。え、なになに? 何が起こっているの? 光線で撃ち抜かれたかのような感覚。またもや重い一撃。ただ、じゃあJUUNAさんだけでこの曲が成立するのかといえばそんなこともなく。これが五重奏の強さなんですね。

ワルキューレが止まらない

 私をワルキューレのライブ2ndBD購入に導いたのは、Youtubeで観たノヴァティックのPVだったのですが、BDを観て最も感激したのが、この曲転調落ちサビから始まる鈴木みのりさんのダッシュ歌唱。完璧なカメラワークと溢れる躍動感、そして全くぶれない歌声。こんなに格好いい映像はなかなかありません。またそれを笑顔でやってのけるのです。非の打ち所がなくて、いつもここだけ何回もリピートしてしまいます。

 この時にはセンターステージまで出てきてくれていたので、しっかりと目に収められると安心。安野さんの致してソロが終わり、1コーラスのサビ。さあ来るか……来るぞ……来た! めっちゃ飛んでる! めっちゃ回ってる! もっかい飛んだ! 海老反りだ! 倒れた! と、最高のパフォーマンスを発揮していただけました。やっぱり現実のフレームレートで見る世界は動きの迫力が違います。ここだけで十分にお金がとれる。全てのライブ映像は、4K60FPS以上で販売されるべきだと心から思いました。

 

ルンがピカッと光ったら

 これまでのライブと同じく、終わりを飾るルンピカ。レスポンスが楽しい一曲。鈴木さんはここでも走ります。少なくとも50メートルはありそうな花道を歌いながら疾走往復。何やってるんだこの人。しかし歌声はぶれない。どうなってるんだこの人。

 

仕事人・坂本真綾

 ワルキューレの五人がステージから姿を消し、観客席からアンコールが呼び声が始まりかけたその瞬間、会場に響き渡るあの人の声。坂本真綾さんです。驚きと歓声。荷物をまとめた方が「マジか」といった顔をして去っていく。そんな顔にもなりますわ。私も1コーラス目は、「こんなこともあるんだなあ」と若干呆然としながら聴いていました。

 そしてセンターステージまで歩き、歌い終えた後は何も言わず去っていく坂本さん。仕事人だ。語らずとも十分。ただただ圧倒されるばかりでした。

 

「長く愛されるコンテンツ」の魅力とは

 時勢的にワルキューレを目当てに来てる方が多いかなと思っていのですが、自席からの観測範囲に限るものの、特にそういうわけでもなかったように思われます。最初から最後に至るまで、皆さん曲目一つ一つに感情が動かされていたように見え、公演中には例えば「FIRE BOMBERが昔と変わらず感動した」とか、「初めて本物の飯島さんを観られてよかった」等の声も漏れ聞こえてきましたし、私より下の年代と思われる方が笠原さんの登場で声を失っていたりと、マクロスそのものが世代を超えて愛されていることを感じられました。それはシリーズ自体が持つ懐の深さの裏返しなのだろうと思いますし、だからこそ今まで続く作品になっているのでしょう。

 「長く愛されるコンテンツ」の魅力を思い知った公演だったとも感じています。出演者の皆さんは、これらの作品、そして曲とともに、今日まで長きにわたる自身のキャリアを積み上げられてきたわけで、良くも悪くも、それらは間違いなく人生の一部になっていると言えるでしょう。私は曲を通して、作品内のキャラクタが歩んだ人生、そしてそれを現に歌っている人間の歩んだ人生を知るわけです。それによって、いかに人の心は揺り動かされるか。ボコボコのグラグラです。

 その点、Δはまだまだ発展途上と言えるでしょうが、本公演での五人のパフォーマンスを見るに、劇場版新作発表の勢いに合わせ、先輩方に負けず劣らず、今世代のマクロスをグイグイと引っ張っていかれるのでしょう。そうして、Δの物語はキャラクター・役者五人が送る人生の一部となり、また次の世代へと受け継がれていく。それは人の営みそのものであり、そうやって物語を絶えず紡いでいく(ことができる)ところに、「長く愛されるコンテンツ」の強さと魅力があるのだと捉えました。今後とも、シリーズの末永い発展を祈るとともに、またこのような喜ばしく楽しい機会に恵まれることを、心から願っております。

 

*1:歌っている時以外の佇まいはかわいい

*2:中島さんの衣装は清楚なワンピースだったので、さらに余計にというところもある。

*3:中島さんについても同じことが言えると思うのだが