死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME -~ PART Ⅰ Start It Up, ~』ハーモニーホール座間に行ってきました(あるいは座間市紀行)

〔前段〕

 2018年7月25日、太平洋沖で発生した台風12号はその勢力を強めながら北上し日本に接近するも、日本の北側に張り出した高気圧によってその進路を西に変えざるを得なくなり、結果的に東から大回りで西日本に上陸するという、非常に珍しい経路をたどることになった。

 働き始めてからも、台風に対してそこまで嫌悪感は持っていない。いつもであれば「けったいな台風やなあ」の一言で片がつく。しかしながら今回は事情が違う。なぜならば、12号が関東に最接近するその時間、私は神奈川県座間市に行かなければならなかったからである。

 というわけで、「Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME -」におきまして、神奈川県座間市ハーモニーホール座間で開催された7月28(土)・29日(日)の3公演に参加してきました(ライブの内容に言及するため、ツアーのネタバレが含まれます。閲覧頂く場合はご注意ください。)。

 〔出発〕

 前日の時点で公式さんからは公演中止如何について言及があり、大丈夫かなあという不安にかられつつも、既に宿は予約しているし、28日が駄目でも29日は流石に大丈夫だろうということでとりあえず出発。新幹線の車内で天気予報を確認すると、丁度公演時間中に豪雨になる様子。また絶妙のタイミングだなと感心しつつ、新横浜へ向かい、滞りなく到着。思えば新横浜、もとい神奈川県に降り立つのは生まれて初めてでした*1。参加者もまた方々の土地を回れるというのもツアーの一つの魅力ですね。*2

 横浜線小田急と乗り換え、会場最寄り駅である相武台前に到着。前回の五井駅と比べると、気温はかなり涼しく、周りに田んぼもない。駅から会場までもそう遠くはなかったため、涼しさを追い風に歩く気も満々だったものの、すでにしとしとと雨が降り始めており、また丁度会場近くに停まるバスが出発を待っていた(かつ空いていた)ため、迷わず乗車しました。会場に着くと雨が強まり、これから難儀なことがおこりそうな予感がしました。

 

〔会場〕

 私が到着したのは15:00頃でしたが、既にロビーにはそれなりの人がいました。天気が天気なため、自由に外に出ることもできません。開場が近づくに連れ必然的にロビー内の人数が増えていくだろうことと、これから来られる方々はおそらく雨風に吹かれながらになるだろうことを考えると、ライブ前からなかなかに体力を消費しそうな気配を感じました。*3

 とりあえずまずは物販へ。前回と同様、各メンバーのリボンチャームは既に売り切れだったため、ブロマイド・ステッカー・座間チャーム・タオル・Tシャツを購入。何となくですが、私はもうリボンチャームを買えない気がします。また、今回は忘れずシートにスタンプを押してもらいました。スタンプ場所の1が空白なのが少し寂しい。*4

 物販からロビーに帰ってきたあたりで、ロビー内にエリアメールの音が鳴り響きました。15:10時点で座間市全域に「避難準備・高齢者等避難開始」が発令。基本的には早め早めの対応ということがあるのだと思うのですが、この時点で避難準備情報が出るのであれば、夜には台風がもっと近づくわけで、結構簡単に避難勧告まで発令されるのではないかと心配でした。そもそも、この状況でワグナーさんたちは安全に開場まで来ることができるのか。主催者側としてはなかなかに難しい判断を迫られていたのではないかと思います。

 時間が過ぎていくにつれ、窓ガラスを通してでも雨風の激しさが容易に視認できるようになり、またロビー内にも人が増えてきたこともあってか、予定よりも30分早い17:00に開場がなされました。数時間立ちっぱなしで待機していた身*5としては、この判断は非常にありがたく、休憩も兼ねて早々に自席へ向かいました。

 

〔入場〕

 市原のときも思いましたが、ハーモニーホールも非常にしっかりとしているというか、語弊を恐れずに言えば公共施設とは思えない高級感のあるつくりでした*6。というか1500席近くある公共ホールってなんなんだ。一般的な規模なのか。

 会場内では前回と同じく既にジャズが流れており、身体が高揚感に包まれました。改めて良い演出だなと思います。さっきまで棒のようになっていた足が自然とリズムを刻み出し、待ち時間が全く苦になりません。この日の席は前から3列目でしかもセンターという非常に良い席だったため、それもあわさって開演が待ちきれないところ、しかし終わってほしくないから始まってもほしくないという情緒不安定な状態で開演の時を待ちました。開演時間が近づくと、ステージ上に運営さんが登壇し、会場のある緑丘地区または座間市全域に避難勧告が発令された場合には公演を中断・中止する旨が伝えられました。ただ無事に終わることを祈るばかりでした。

 

〔開演〕

 何度でも言いたくなりますが、山寺さんのナレーションからSHIFT~地下鉄ラビリンスまでだけで、チケット代7,560円(税込、あと手数料)以上の価値があると思っています*7。まず声だけで、喋りだけでお金を取れるというのはこういうことなんだと山寺さんに思い知らされた後、照明(シルエット演出含む)と音楽に脳がやられ、幕が上がって「成長したい」が聞こえてきた段階でついつい顔が綻んでしまうのです。声にならない笑いと言いましょうか。笑顔の嗚咽のと言いましょうか。力が入りすぎてしゃっくりが出そうになる感じになるんですね。「なるんですね」と言っても全く言語化できていない気がしますが、とにかく身体の中から感情が溢れ出そうになる。それを何とか押し留めて「レッスン レッスン」で少し吐き出す。そして「オーディション!」でようやく喉元に余裕ができる。余裕ができたところに空気を入れて次の声を出していく。ここの興奮たるや。一瞬で世界観を創り出してしまうSHIFTは、本当に素晴らしい一曲目であると思います。

 そして先ほど申し上げたとおり、この日はとてもステージが近い席でした。どれぐらい近いかというと、WUGちゃんたちの細かい表情や足のアザが確認できるぐらい。「あっWUGちゃんって本当に人間なんだ」と、相も変わらず、しかしいつも以上に実感できるのは良かったのですが、以下の理由により私のような素人にはむしろおすすめできない。

 ①刺激が強すぎる

  とにかく距離が近すぎました。いや、それ自体は非常に嬉しいことなんですが、いかんせん刺激が強い、強すぎる。まず、ステージに近いということは、必然的にステージの高さをしっかりと認識することになります。ステージが高さを持つのは、単にそうしないと客席から見にくいからだと思うのですが、それに加えて「ステージ上は別の世界である」ことを視覚的にも明確にするためであると(勝手に)私は思っています。つまりは現実ではないことの明示であり、ステージと客席には見えない壁が作られているんです。そんな壁をはっきりと認識させられる状態にもかかわらず、目の前には(当たり前ですが)現実の人間であるWUGちゃんたちが踊っているわけで、世界の境界線が曖昧になり、何がなんだかよく分からなくのです。

  さらに言えば、やはりステージの高さの関係で、曲中のWUGちゃんたちの目線は、主に客席より少し上になるんですね。とても近くにいるのに、ほとんど視線が交差しない状況が続き、より一層別世界を覗き込んでいるような感覚が強くなります。しかし、実際には別世界ではなく、目の前で歌って踊っているわけなので、状況の処理が追いつかない。自分の立ち位置が見えなくなるのです。これはすごい体験をしているなあと思いました。

  極めつけは音響です。特に極上スマイルのときが顕著でしたが、スピーカーからの距離も近いせいなのか、パーカッションの重低音だけが耳に響き、伴奏が殆ど聞こえない中で、しかしマイクを通したWUGちゃんたちの声は聞こえるという状況でした。トリップとはこういうことを言うのでしょうか。ズンドコズンドコ響き渡っているので、コールもよく聞こえないぐらいです。でもWUGちゃんたちの声ははっきりと聞こえるんです。世界に自分とWUGちゃんたちしかいないかのような感覚、そしてそれを冷静に少し俯瞰的に認識している自分。ライブあるあるなのかもしれませんが、私としては生まれたはじめての経験ができました*8

  

 ②どこを見ていいかわからない

  視野内にステージが収まりきらないので、眼球運動が激しい。気を抜くと焦点が合わなくなっていました。推しを見続ければいいじゃないかって? 私は箱推しなのだ。あとは舞台効果の美しさが伝わりにくいということもあるかもしれません。その意味では、席の遠近で全く別の楽しみ方ができるライブだと思いました。

 

〔カラオケ〕

 私はツアーというものを侮っていました(または勘違いしていた)。Non stop diamond hopeの後、メンバーたちがステージ上に現れたところで、漠然と「市原とはセトリを変えてくるのかなあ」ぐらいに思っていたのですが、それどころではありませんでした。まず制服姿の田中さんにきつめのボディブローをくらいつつ*9、宣言されるカラオケ大会の開催。「ネットで見たことあるやつや!」と興奮しました。過去にニコ生やわぐらぶの企画でカラオケをやっていたのは認識していましたが、私がWUGを知ってからはそのような機会もなかったので、過去からの伝統的な企画であるところのカラオケを生で見ることができたのはとても嬉しく思いました。

 選曲を見て、私がWUGちゃんを好きな理由の一つには、「彼女たちは自分と同時代の文脈の中で生きてきた人間である」と感じられるから、ということがあるのだろうと思いました。WUGちゃんのことですから、一曲一曲きっと意味をもって選んでいると思うのですが、私個人としては、単に「これまでの自分の人生の中でよく聞いた」曲が選ばれているところに懐かしさを感じるわけです。一緒に歌えるわけです。上記で別世界だ何だと行っておきながら恐縮ですが、私はWUGちゃんに対して、「あまり会話はしなかったが、学生時代の同級生だった女の子」レベルの親近感を持っているようです。その女の子が、ひたすらに頑張った結果、今ステージの上に立っている。そんなもの、応援しないわけにはいかない。人によっては子どもを見るような感覚なのかもしれません。それこそ、青山さんが言うように親戚に会ったような感覚の人もいるでしょう。それらがアイドルという存在にとって良いことなのかはわかりません。しかし、WUGちゃんの魅力を構成していることは間違いがないのでしょう。

 

〔リーディングライブ〕

 一人制服姿のままマイクの前に立つ田中さんに会場から笑いが起こる。衣装の重要性をしっかりと認識できる機会ですね。なお二日目はきれいな静寂。皆さん空気が読める*10

 3回聞けたおかげで、どこで皆が遊んでいるのかがよく分かりました。キャラの造形を崩さずにどこまでふざけられるかは、こういう場の楽しさだと思いますが、打ち返すほうが大変ですよね。そもそも演者間の息があっていないと、テンポよくアドリブのやり取りはできないわけで。こういうところ、やっぱり彼女たちはアイドルと言うよりは役者なんです。だからこそ、もっと何かを演じる姿を見たいですね。あとリーディングライブ終了時の会場の拍手が一番気持ちいいと思います。「舞台」という感じがする。

 それはそうと実波のサイコパス化著しくないですか?

 

【二日目と諸々】

〔行路〕

 台風が来ていたのが嘘のように快晴。せっかくだから座間駅から歩いて会場に向かうこととしました。なぜ自分から汗をかきに行くのか。自分でもよくわかりませんが、暑い中を歩きたくなる何かがそこにはある。

 昨日は悪天候+逆方向だったので気づかなかったのですが、ホール敷地内に大々的に掲げられた幕によれば、どうやら座間市はひまわりの街らしい。なんともまあ田中さんらしいというか、実波らしいというか、色も花のイメージもこれほどまでにぴったりなものはないなと思いました。それも込みで会場が選ばれたのか。はたまた、単なるご縁でしょうか。

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〔開演〕

 昼の部はありがたいことに通路沿いの席だったため、メンバーが下界に降りてきたときには、非常に近くで姿を拝見できました*11。冷静に考えると、近くに来るだけで周りの人間が笑顔になるというのはすごいことですね。

 ステージから離れたことにより、一日目より比較的冷静にステージを見ることができました。驚いたのはNon stop diamond hopeのときの客席の美しさ。ペンライトで黄色一色に染まり、まさにひまわり畑の様相。赤や白とはまた違った趣きがありました。1回ぐらいは2階席から見てみたい。

 

〔アンコール〕

 ワグナーさんたちの「Wake Up, Girls!」が始まるまでものの数秒であった。

 市原のときと比べて、アンコールがアンコールらしく自由になってきました(市原も夜の部はそうだったのかな)。特に7sensesは毎回ふざけ方が異なるのでとても楽しい。そしてOP曲であるのに公演を総括する印象を強く感じられる不思議な曲ですね。

 

【総括的に】

 帰りの新幹線でアイドルとファンの関係性とは一体何なのだろうかということを考えていました。彼女たちが「ファンから元気をもらっている」と言ってくれている以上は一応互恵関係がある(私たちは彼女たちから元気をもらっている)と言えるのかしら。そこに「家族」という概念が入ってくると、より一層お互いに助け合ってる感がでてくるように思うわけですが、現実には一方的に与えてもらってばかりなような気もする。おそらくは往年のアイドルファンの方が通ってきた道かもしれませんが、何かこういうことを論じた社会学系の本や論文もありそうなので、ちょっと探してみたいなと思います。さあ次は大宮。Part1ラスト、昼だけの参加となりますが楽しんで参りたいと思います。でもそれが終わったら次はファンミですか。声優って大変な職業ですね。

 

【その他】

開演前BGMをまとめておられるサイトがあった。ありがとうございます。早速It Don’t Mean A ThingをDLしました(ナイスamazon)。

・2日目夜、It Don't Mean A Thingが流れ出すとともに客席の一部では手拍子が始まったが、これがとても気持ちよかったので大宮でも再現されると個人的にうれしい(自分からしようとはしない奴)。

・どっかで聞いたことあるな~と思って調べたら、Hey Pachucoは映画『マスク』で用いられた曲。ここでも山ちゃんの存在が仄めかされている…?

・全く意識していなかったが、Partごとにセトリが変わるとするのであれば、SHIFTを見れるのは次が最後? と考えると非常に寂しくなる。どうなんでしょうか。

・加えて言うと、映像化するのはPart3のオーラスだけ? となるとPart1,2はそもそも映像に残らない? と考えると非常に寂しくなる。誰かどうにかしてください。

・絶対にありえないけど、全公演BDBOXを出してくれるなら買う気は満々です(そもそもカメラ入ってないけど)。

・あの映像を複数回見ることになるのは誤算。でも前向きに見れるようになったと思う。

・泣かずに来れていたのに、2日目夜の7sensesでは泣いてしまった。MCで家族というワードが複数出たことに起因する。

・やっとテープとれた(7sensesのやつ)。

・自分の子どものライブを見に来るってどんな感覚なんだろうか。幼少期の発表会とかと変わらないのだろうか。

・近くで見るまゆしぃのダンスはとにかく迫力があった。足を畳んでジャンプをするので、滞空時間が長い。

・近くで見るあいちゃんのダンスはとにかくキレキレだった。これを見れる機会が減るのは悲しい。

・近くで見るみにゃみは太陽でありひまわりであった。あと怒り肩。芸達者で器用なところほんと尊敬する。

・近くで見るよっぴーはやっぱり表情豊かだった。いつアーティストデビューするんですか?

・近くで見るかやたんはとても可憐だった。何でできているのだろう。

・近くで見るななみんは一つの造形美術だった。

・近くで見るみゅーちゃんは笑顔が弾けていた。弾け飛んでいた。

・ブロマイドでみゅーちゃんのサイン入りが出ました。ステッカーコメントもみゅーちゃんでした。さんきゅーみゅーちゃん。

*1:コーエーとアークのイメージしかない

*2:関東の県を回るだけでもこういう楽しい気持ちになるわけなので、東北ろっけんツアーなんてもっと楽しかったのでしょうね。

*3:何でもそうですが、オタクを続けるための第一の条件は結局健康であることのように思います。

*4:全通したけどスタンプは11個という結果を目指す

*5:これはこれで久しぶりにじっくりと本が読めて良かった

*6:少なくともうちの市のホールはこんなではない

*7:何だったらジャズの流れる会場に足を踏み入れた瞬間からとさえ言えるかもしれない

*8:終わった後は非常に疲れているものの

*9:言葉にできないぐらいに似合ってましたよね

*10:それか慣れただけか

*11:距離的には昨日の席よりさらに近い