死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

債務不履行に係る損害賠償責任について

【発端というか問題意識】

 何となくの枠組みで答えてしまっているものについて、今一度考え方を整理しておくべきと思っていた。

債務不履行責任による損害賠償】

 債務不履行に基づく損賠責任の発生要件は、以下の5点である。すなわち、

①債務の存在

②事実としての不履行

③債務者の帰責事由

④損害の発生

⑤②と④の因果関係 である。

 この内、①と②が問題となることは、私の環境下ではほぼないため(本来は検討すべきだろうが業務の性質として)、③以降を検討することにする。

 

【帰責事由の認定について】

 一般的にそうであろうが、当社が締結する契約書には免責条項が設けられるのが通常である。この点、ネット上で数社の約款*1を見たところ、「責めに帰すべき事由による場合」を除いては賠償責任を負わないと規定しているものが多く(標本数が適切かはさておき)、個人的にもそれが一般的な規定であると思われる(約款を用いない場合でも、特にこだわりのない(ギリギリ文言を詰めてこない)事業者とは、同様の規定で締結することが多い)。

 帰責事由の有無は、故意、過失または信義則上これと同視すべき事象があったかどうかで判断がなされる。*2

 基本的に故意の有無が問題なることはない(それが疑われる場合には、そもそも争うことはしないと思われる)から、過失があったかどうかがまずもっての論点になると考える(信義則の点も補助的な主張になろう)。

 過失とは結果回避義務違反のことであり、具体的には「結果発生の予見可能性がありながら、結果の発生を回避するために必要とされる措置を講じなかったこと」を言う。すなわち、結果発生の具体的危険が存在し、その予見可能性が行為者に認められることが前提となるが、予見可能性の有無は、職業・経験等を加味した平均人を基準に判定される。具体的危険の予見可能性があったのに、それを回避するための行動をとらなかったことをもって、結果回避義務違反=過失があった、と認定される。

 

【損害の認定について】

 行為者に帰責事由が認められるとしても、そもそも損害が発生していなければ賠償責任を負わない(不注意によりご迷惑をおかけし申し訳ありませんが、お詫び以上にできることはありません、ということになる)。したがって、損害とは何を言うのかが一つの論点となる。

 損害はまず財産的侵害と精神的損害とに区別することができる。しかしながら。取引上の債務不履行においては、精神的損害生じないとして損害の発生自体が否定されるのが通常。

 財産的侵害はさらに積極的損害と消極的損害に区別される。積極的損害とは、債権者に実質に生じたマイナス=利益の減少のことを言う。一方で消極的損害とは逸失利益のことを言う。これらの区分に基づき、損害の有無を認定する。

 損害の有無については、債権者側が立証責任を負い、その有無だけではなく、厳密な損害額まで立証する必要がある。

 

債務不履行と損害の因果関係について】

 上記のような損害が発生していても、それらが債務不履行と無関係であるならば、債務者は賠償義務を負わない。すなわち損害が賠償されるためには、債務不履行と損害との間に相当因果関係がなければならない。相当因果関係はいわゆる事実的因果関係(あれなければこれなしの関係)と区別されるもの、その存在を前提とするものである。

 民法上(416条)では、通常損害および、発生事情に予見可能性のある特別損害については、相当因果関係が認められる=損賠の対象となる。ある損害が通常損害なのかそれとも特別損害なのかは、契約類型・当事者の性格などの要素を考慮して判断される。結局はケースバイケースということ。なお、予見可能性については、債務者にとって履行期又は債務不履行時に、その特別な事情が予見可能であったが判断基準となる。

 

 

  

 

*1:例えばdocomo(第63条1項・P.43)

*2:この点は学説上議論があるところのようだが、ここではよくわからないので割愛する。